高齢期の生き方を考える先にある看取り介護
今月に入って高齢者介護に関連して重要な国の統計が複数示されている。
9日に公表された2018年版の厚生労働白書は、統計不正問題等に関連して異例の、「お詫び」の言葉が冒頭の「はじめに」から並べられている。
これに関して、「謝れば済めば警察はいらない」などの批判的なコメントも寄せられているが、白書で謝罪するということはかなり大きなことではないかと思う。省内でこのような文言を入れることに全く抵抗がなかったとは思えず、謝罪の文言を入れるに際して、作文した人にはかなりの勇気と覚悟が必要だったのではないだろうか。
白書という閣議了解を必要とする公的資料に、このような謝罪を載せたこと自体に大きな意味があると思え、このあたりは相応の評価をして良いのではないだろうか。
ただ今後は厚労省が集めたデータをもとに、「自立支援介護」のガイドライン作りが進められるのだから、この部分への監視は欠かせない。ここに不正統計があっては、自立支援の名の給付抑制が進められるだけの結果になるので、注意深く見守りたい。どちらにしても国の分析を無批判に受け入れるだけでは、施策も制度も良くならないことを関係者は自覚すべきだ。
特に介護保険制度の中心職種と言える介護支援専門員に、制度の知識が無かったり、国が示した方針を無批判に受け入れる傾向が強いことは気がかりだ。日本介護支援専門員協会という職能団体は、介護支援専門員全体の利益代表ではないということにも注意して、それぞれのステージで、国から出されるデータなり、方針なりを分析する知識と気構えを持っていただきたい。
そのほか今週出された統計の中では、10日に総務省から公表された、住民基本台帳に基づく今年1月1日時点の人口動態調査の結果が気になるところだ。
それによると、日本人の人口は前年より43万3239人少ない1億2477万6364人。減少は10年連続で、今回は過去最大の減り幅となっている。この現象の根っこには、出生数が減り続け過去最低数になっているという自然減という最大要因があり、それは将来にわたって生産年齢人口が減少し続けるという意味を含んでいる。
日本全体の労働力が日本人だけでは賄えないことが明白になるなかで、介護労働力をどのように確保するのかという問題の解決策はないと言って過言ではない。そうであるからこそ介護事業者は、国の施策に頼るだけではなく、それぞれの事業者の企業努力と覚悟も必要になるのである。この部分で後塵を拝しては、事業経営が困難となることを自覚していただきたい。
また2日には、国民生活基礎調査(2018年)が公表されている。
それによれば全世帯に占める高齢者世帯の割合は27.6%と過去最高になっており、このうち「単独世帯」の性別は、男性32.6%に対して女性67.4%と、圧倒的に女性の比率が圧倒的に高くなっている。しかし「孤立死」・「孤独死」する人の7割は男性だという事実がある。
これは何を示しているのか・・・。高齢者支援として何が求められているのかという答えがそこにはあるのではないだろうか。僕の「看取り介護講演」では、(120分以上になれば)このことも含めてお話しすることが多い。
画像のスライドは、8月5日(月)に島根県松江市で行われる、島根県老人福祉施設協議会主催・看取り介護研修会での5時間講演で使うスライドの中の1枚である。
看取り介護と言えば、回復不能の終末期と診断された人に対するケアに特化して考える人が多いが、僕はそれは少し違うのではないかと考えている。
看取り介護とは高齢者の生活支援全般を考えるうえで、最終的にたどり着くケアステージであり、決して特別なケアではない。そこに至る過程では、終末期になった場合にどこでどのように過ごしたいのかという、リビングウイルの確認支援という重要な役割が介護支援者すべてに求められてくるし、一見看取り介護とは関係性がないと思われている、「孤独死」の問題についても、高齢者が仕事をリタイヤした後などに、どのように社会性を保ち、地域社会と分断されないかという観点から、その問題を考えることが最終的にはすべての地域住民が、最期の時間を安らかに過ごすことができるということにつながっていくのではないかと考えている。
だからこそ孤独死問題と看取り介護は無縁ではないし、関連性が高い問題であるのだと思う。
そして看取り介護に関して言えば、人が最期の瞬間まで生きる喜びを感じることができることを信じて、そうした生き方を支える介護であり、介護関係者が看取り介護を、「する・しない」、「できる・できない」と判断するのではなく、日常介護の延長線上に、ごく当たり前のように看取り介護の実践があると考える介護業界になってほしいと思っている。
島根県松江市の看取り介護講演の前にも、今月25日は札幌で2時間の看取り介護講演、27日には東京神楽坂で4時間の看取り介護講演を行なう予定だ。(参照:masaの講演予定)
それらの講演は加算を取るための方法論を教えるためのものではなく、看取り介護とは何かということを伝える講演である。それは人が生きる過程を支えるという意味で、誰にでも提供されるべきケアであり、日常支援の一つとしてごく当たり前に関わるべきケアであることを伝えたい。
今年1月に上梓した、「看取りを支える介護実践~命を支える現場から」も同じ目的で書いた本である。是非一度手に取って読んでいただきたいと思う。
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Source: masaの介護福祉情報裏板