新処遇改善加算の職場での配分をシミュレーションしてみた

来年10月に消費税が増税される分を財源として支給される予定になっている新介護職員処遇改善加算については、文字に張り付けたリンク先に、新たにカテゴリーを追加しているので参照していただきたい。

さて今日は、その新処遇改善加算を算定する事業者が、どのように事業所内で配分できるのかを小規模の事業所を例にシミュレーションしてみようと思う。なお算定要件は「新介護職員処遇改善加算の要件・ルールのまとめ」で確認願いたいが、シミュレーションするのは、当該加算のうち高い方の加算(2段階とされる加算のうち、サービス提供体制強化加算等を算定している場合)を算定できるという前提である。

この加算はサービス種別に応じた加算率で計算するが、ここではわかりやすいように加算対象職員に月額8万円が加算されるという前提で考えることにする。

例えば管理者1名、介護支援専門員(計画担当者)2名、介護職員12名(すべて常勤)の2ユニットの単独経営のグループホームであるとする。(外部の医療機関の看護師との連携で医療連携加算を算定している事業所のため、看護師の配置はないという前提)

サービス提供体制強化加算Ⅰイを算定できているのだから、介護職員のうち8人が介護福祉士であるとする。しかし介護保険制度以後に数多くつくられたグループホームで、定着率も高くはないサービス種別であるため、新処遇改善加算の算定対象となる、「業界10年以上の経験がある介護福祉士」はそう多く配置できていることは考えにくいため、その人数を3人と仮定する。

そうであれば加算額は、8万円×3人=24万円(月額)となる。これをそのまま当該加算算定対象職員3名に支払うこともできる。そうなるとその他の9名の介護職員と、2名の介護支援専門員はこの加算による給与アップがないということになる。そうであればこれらの職員は、少しでも給与に上乗せされる別な職場に転職したいと思うかもしれない。

そこで加算対象職員以外にも加算分を配分しようとする。ただし職員を優遇するために管理者には加算分を配分しないシミュレーションとしてみよう。

この場合、月8万円の賃上げとなる人・あるいは賃上げ後に年収が440万円を超える人を一人以上確保しなければ加算を認めないというルールがある。しかし単独経営のグループホームで働いていて、年収が440万円目前の職員がいる確率はあまり高くないだろう。

すると加算対象の3人のうち、一人に対しては満額の8万円の給与改善をしなければならない。A・B・Cの職員のうち、誰か一人をこの対象にするのは非常に難しく、いざ決定しても3人のうち満額配分されなかった2人は不平・不満をもって、他の職場に転職しようと考えるかもしれない。されど他職員に配分するために、リーダー格で一番経験年数の長いA職員に満額支給し、BとCの加算分を全体に配分するとする。

すると配分できるのは、16万円(月額)ということになるが、配分の際には、①経験ある介護職員・②その他の介護職員・③その他の職種に対する賃上げ幅を2:1:0.5(あるいは1:0.5:0.25)とするというルールがある。この場合、①②③の各グループの「平均」を指標とすることになったため、個々の賃上げ額をどうするかは事業者が判断できるが、ここではわかりやすいように①②③の各グループ内の支給額は全員同じとする。

するとこのホームでは満額支給したAを除いた①は、BとCの2名、②は9名(その他の介護職員)、③は2名(介護支援専門員)となる。このグループに16万円を1:0.5:0.25以内の比率で配分するわけである。

とすれば①を一人4万円とした場合、そこで8万円が必要になる。そうなれば残りの8万円を②と③に配分するということになるが。②の対象は9名もいるため、一人1万円も給与改善する原資は存在しないことになる。そうすると②を一人8千円として、合計で7万2千円が必要になる。そうすると残りは8千円で、③は一人4千円支給ということになる。

これによって加算分はすべて職員に手渡すことになり、かつ算定要件をすべてクリアすることになる。
(※①を4万円とする根拠は特にないが、満額支給される職員が1名いるため、その半額未満になるのを納得させるのは難しいという意味で、ぎりぎりの額を設定した。この額をさらに満額支給される職員との差を縮めるために高くすると、②と③のグループに支払う原資がさらに低額となり、給与改善額もさらに低額となる。それでは配分する意味がほとんどなくなると考えた。)

ということで当該グループホームでは、管理者は昇給なし、加算算定対象となった経験ある介護福祉士のうち1名は月額8万円の給与増、2名は4万円増、それ以外の介護職員は資格の有無にかかわらず全員8千円の給与増、その他の職種である2名の介護支援専門員は、4千円の給与増という結果となる。

この場合、加算分の8万円を満額支給されたA介護福祉士に不満は生じないだろうが、それ以外のすべての職員が何らかの不平・不満を持つ可能性が高く、より給与が高く支給される別の事業者に転職しようと考えるのではないだろうか。

果たしてそれはどこの、どのような介護事業者だろうか?(明日へ続く)

※もう一つのブログ「masaの血と骨と肉」、毎朝就業前に更新しています。お暇なときに覗きに来て下さい。※グルメブログランキングの文字を「プチ」っと押していただければありがたいです。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

・masaの最新著作本「介護の誇り」は、こちらから購入できます。

Source: masaの介護福祉情報裏板