妥協のない人材選びと育成が未来を切り拓く

骨太改革で社会保障費の自然増を年間5.000億円に抑え込んだとしても、介護給付費は2028年には、2018年と比較して10兆円増大する。

今後の10年間に関して言えば、介護給付費だけで確実に100兆円増えるという市場の中で、保険サービスの顧客を増やすという戦略を、介護事業経営者が練ることができさえすれば、確実に事業は成長させられるわけである。

しかしもっと長期的な事業戦略を見据えて、将来長く介護事業経営を続けようとした場合、高齢者の数の減少社会に入っていることを考え、いずれかの時期には介護給付費に頼り切った事業経営に見切りをつけて、保険外事業でも収益を挙げていく構造へと転換を図らなければ、事業経営は頭打ちとなることは明白である。

その時、どのような保険外事業を選択できるのかは、時代の流れを見据えて見つけ出していくしかない。しかし保険外事業が簡単ではないことは、「保険外事業で誰もが稼げるわけではない」という記事においても問題提起しているところだ。

だからこそ保険内外両事業を支える基盤は、人材であることを忘れてはならず、保険給付サービスより厳しい競争を強いられる保険外サービス競争で勝ち残るために、そこを担う能力がある人材を確保していかねばならない。

そのためには座して人材が来るのを待っていても始まらない。どういう人材が必要かを明確に意識し、そうした人材を確保するために、他の介護事業者との差別化を図って、独自の方法で人材確保という面でも勝ち残っていく必要があるし、職場の中で人材を確実に育て伸ばしていかないと、必要な人材確保はできなくなる。

そのためには人材がどういう場所に集まり、どういう場所で育っていくのかをきちんと見据えて、人材が集まり育つ具体策を取っていくしかない。

職員募集に応募してきた人を、とりあえず全員採用してしまおうと考える事業者であっては、人材は育つことはない。そのような事業者に居座る、「能力のない職員」の存在によって、職場環境は悪化し荒廃する。そこからは人材が流出するだけでなく、人員さえも逃げていくため常に職員募集をし続けなければならず、人員が足りない分、さらに誰でもよいから採用しようということになり、益々職場環境が悪化するという悪循環が永遠と続くことになる。そんな事業者は消えてなくなる運命の途上であると言ってよいだろう。

そもそも事業経営に理念は大事だが、理念を念仏化しても何にもならない。理念を標語のようにして職員のネームプレートに記入して、首からぶら下げさせても、犬の首輪の役目さえ果たさないのである。

「未来につながる介護」・「尽力・誠意」・「心配りの介護」・「地域住民の福祉の向上」。どれも大事だが、それを標語にするだけで実質が伴っていなければ介護事業者の発展は見込まれない。

介護事業の経営理念を高く掲げて、他の介護事業者の追随を許さない高品質なサービスの提供を目指さねばならないのはいうまでもないが、それが標語で終わってはならないのだ。高い理念を掲げるならば、それを実現するために妥協のない職員教育が必要になる。それによって重度障がい者への高品質ケアや認知症ケアや看取り介護も、他の追随を許さないレベルで提供できる高品質な介護サービスの技術力を持つ結果につなげていくという結果を出さねばならない。

それができたとき必然的に地域住民から選択されるだけではなく、職員のサービスも洗練されていくのだ。

そうした職場には、「高品質なサービスを実践したい」・「自分の技能を高めたい」と考える有能な人材が集まってくるのだ。そうした職場であるからこそ人材は自然に集まり、定着率は格段に上昇するのである。

技術力・サービスマナー意識の低い職員がいても、人手がなくなることを恐れて、そうした職員を排除できない介護事業者に、洗練された介護技術など持てようはずがない。そうしたところは顧客から選ばれずに、人員にもなり切れない無能な労働者しか寄ってこないだろう。そしてそうした職場環境は、何事も怠惰と退廃に傾くだけに陥る。

要するに凡庸な介護に終始する介護事業者ほど、理念を空想化し標語にこだわる傾向に陥り、職場環境も良くならず、人員確保にさえ汲汲としてまともな介護事業経営などできなくなるということだ。

高品質な介護技術によるサービス提供と、五つ星ホテル並みの職員教育をうまく融合させていくところがあるとすれば、それは日本の介護の先頭に立って、安定した事業経営が続けられる介護事業者として成長を続けられるだろう。

生き残りをかけた事業戦略を真剣に考えるならば、事務職員の電話対応から、看護・介護職員の言葉遣いや所作まで、厳しい躾(しつけ)を行き渡らせる必要があることを、事業経営者は心するべきである。この部分に妥協が多すぎるから、いつまでも経営者の目指す職場は実現できないのだ。できない人員は辞めさせるしかないことを事業経営者は肝に銘ずるべきである。

つまるところ介護事業者は人なのだ。介護施設にいくら最新の介護ロボットを導入したとしても、人に恵まれなければ、その介護施設は資材置き場と化すだけである。

だからこそ人材確保と育成のためにこそ労力とお金を使うべきなのである。

ただし実効性が見込めない方法、実際に効果が出ないで漫然と続いている方法に労力とお金をかけても死に金になり無駄になるだけだからその見極めは必要だ。経営コンサルに丸投げして、資金だけかけてもさっぱり人材問題が解決していないというのは最悪である。

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Source: masaの介護福祉情報裏板