義務化しなければ意味がない限定免許

高齢ドライバーによる相次ぐ交通事故が社会問題化しているが、6/11の夜にも名古屋で、70代の男性が運転していた車が一方通行の道を猛スピードで走り、小学校のガードレールとフェンスを突き破って、小学校の校庭に突っ込むという事故が起こっている。
小学校の校庭に突っ込んだ事故車
画像の中で、手前に写っている歩道は児童の通学路である。事故車はこの歩道に乗り上げた後、フェンスを突き破って校庭の花壇の上で停まっている。

事故発生時間は午後7時前で、幸い児童は全員下校していたため、この事故に巻き込まれた被害者はおらず、ドライバー自身が軽傷を負っただけで済んだ。しかし時間が1時間前にずれていたとしたら、多くの小学生が事故に巻き込まれて死傷するという大惨事になっていたかもしれない。

事故を起こした男性ドライバーは、警察の調べに対し、「フェンスにぶつかったことは覚えているが、それ以外は記憶にありません。」と話しているそうであるが、猛スピードを出すほどアクセルを踏み込んでいた状況も、「記憶にない」ということは、認知機能の低下が疑われて当然である。

高齢者の数が増え、認知機能の低下したドライバーの数も増えることが明白な今日の状況で、「いたずらに高齢者から運転免許を取り上げればよいわけではない。」などという悠長な論議がまかり通っていて良いのだろうか?高齢者の権利を護るために、この国の将来を担うべき幼い命が危険にさらされていのだろうか?認知機能の低下したドライバーによって将来ある若者の命が沢山奪われている現実があるのに、高齢者の運転する権利の前に、手をこまねいていることが果たして民主国家のあるべき姿なのだろうか?

このように多発する高齢ドライバーの事故を受けて、政府は高齢者向けに安全機能が付いた車種のみを運転できる免許制度を創設する方針であることが判明した。
 
政府が検討している高齢ドライバー専用運転免許の対象となるのは、75歳以上とみられており、「オートマチック車限定」同様、自動ブレーキシステムなどの安全機能を有した自動車のみを運転できる免許とする方針だそうである。ただし現在のところ、「安全機能」の詳細については決まっておらず、今後国内の自動車メーカーと協議の上、決めていくという。そして新免許については、75歳を超えた際に義務として強制的に取得させるのではなく、現在保有している免許と安全機能付き限定免許のどちらかを選ぶ選択制とする模様である。

しかし75歳を超えた人が果たして、限定免許を選択するだろうか?限定免許を選択するには、車を買い替えなければならないケースもあるだろう。そうであれば果たしてその年齢で車を買い替えようという動機づけは生まれるのかということにも考えが及ばねばならない。その年齢で免許を更新する人は、使い慣れた愛車をそのまま乗り続けようとする人の方が多いだろう。そのことも含めて、限定免許を選ばない人の方が多くなるのは明白だ。

そもそも今現在重大な交通事故を起こしている高齢ドライバーとは、ほとんど自分の運転技術に自信を持っている人である。「年齢だから、そろそろ免許を返納するべきかな」と周囲に漏らしている人であっても、自分の運転技術そのものに不安を持っているわけではない。そんなふうに運転技術に不安を抱えながら、注意深く運転して事故を起こしている人は、ほとんどいないわけである。

そういう人が自分の運転に制限がかかり、なおかつ新たな車の購入や部品の付け替えなどの費用負担も増える可能性が高い限定免許を選ぶとは思えない。

つまり現在検討されている政府の、「限定免許の選択制度」など何の意味もない。それは高齢ドライバーの事故の減少には何の効果もない対策である。

限定免許制度を創設するなら、それは義務化すべきである。

例えばそれは2段階の義務制度とするのはどうだろうか。65歳以降は免許更新のたびに限定免許を選択できるようにして、75歳になれば限定免許しか発行しないと義務化すれば、義務化される前の時期に、限定免許に対応する車に買い替える人も増えるのではないだろうか。65歳の時点では、まだ10年は運転できると考えて、車の買い替え動機も、75歳以上の年齢より高いと言えるのではないだろうか。

・・・とここまで書いたところで気が付いたことがある。僕は今、一番型式が新しいプリウスに乗っているが、この車には様々な安全警報装置がついている。前後左右に障害物が近づけば警報音が鳴るし。ウインカーを出さずに車線変更して、白線を跨いだら警報が鳴る。しかしそれが安全装置と言えるかどうか・・・警報音も慣れてしまうのだ。

自動ブレーキは安全性を少しは高めるかもしれないが、完全に事故を防ぐことにはならないだろう。そう考えると、完全自動運転の車ができない限り、最も安全な方法とは、「運転しない」ということでしかないのかもしれず、制限免許を義務化しても、問題の解決には程遠いのかもしれない。

どちらにしても高齢ドライバーの事故防止対策は、待ったなしである。免許返納という「自覚」に期待していては、何の罪もない誰かが巻き込まれる大惨事を防ぐ術はない。

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Source: masaの介護福祉情報裏板