ナニサマの面会

朝のこと。

夫が,、いきなりこう言ってきた。

 

「今日、おばあちゃんのところへ行く」

 

私は、何気に

「あ、そうなの。いってらっしゃい」

と答えた。

 

すると、夫、

「え?あなた、行かないの?」

「あら、お父さんが行ってくればいいじゃない」

「えー、それ、おかしいでしょ。俺が行っても話すことないし」

 

ん?どういうこと?

私が行ったら何か話すことがあるとでも?

 

要するに一人では行けないってこと。

どこぞにもそんなご主人おられましたよね、さんちゃん?

 

施設では面会時間を書かなければならない。

入った時間は11:05

帰る時間も書かなければならない。

「う~んと・・・11:20でいいかな」

と書いていたら、夫、苦笑いして

「せめて11:30と書いてやれよ」

ですって。ふん!

 

ナニサマは、一人離れて足を上げてフロアにいました。

他の利用者さんたちは、カラオケに参加していました。

参加と言っても、主に歌っているのは年配の職員さん、みんなはそれに合わせて時々声を出すという感じでしたが。

 

夫はこの1カ月に送られてきた義叔母(ナニサマの妹)の便りを何通か持ってきてあげたのです。

黙って読んでいるナニサマ。

読み終わったら、また夫にそのハガキを持って行くよう返していました。

 

ナニサマの部屋に行くと

「今日は何かね?」

と聞いてきた。

「ハガキとおばあちゃんの顔を見に来たんだよ」

と、夫は優しいこと言ってましたが、ナニサマは相変わらず

「え?え??」

と繰り返していましたわ。(笑)

 

夫は部屋から携帯で義叔母に電話をかけ、ナニサマに代わった。

ナニサマはここでも相変わらず、

「え?え?」を繰り返し、最後は、

「ありがと。ありがと」

だけ言って電話は終わった。

後は夫が叔母と話していた。

 

ナニサマが一番喜んだのは、曽孫の話をしたときだった。

 

長男の孫姫の動画を見せたら

「あら、可愛いねえ~。お目目が大きくてなんて可愛い子」

と、目を細めていた。

次男の孫太郎の写真も見せると

「あゝ、可愛いねえ」

とこちらも目を細めてしげしげ見ていた。

「名前、何だっけね?」

紙に漢字でフリガナ付けて書いてやると

「いい名前だねえ」

って。

こんなときは実にいいバアチャンになるんです。

やっぱり年寄りは赤ちゃん好きだよね。

ただそれだけ。(笑)

 

一年中、快適な気温の中にいるせいか、着るものに対する欲求もなく

今回は珍しく要求がなかった。ふ~ん。

 

30分過ぎたところでお暇することに。

だって、11:30には昼食の準備が始まるんだもの。

気持ちはもうそっちにいってるもんね。

やっぱりナニサマだった。

 

それでも帰ろうとしたら

「ありがとうね」

ですって。

 

施設にいる方が、お互い穏やかでいれていいみたいよ。

Source: 鬼嫁介護日記