策士健在続編

夫に、昨日の施設からの電話の件を伝えた。

 

「はあ?帽子?帽子ってなんで?」

「外に出るからじゃない?」

「ふ~ん、じゃあ、持って行ってやるか」

 

とまあ、普通の会話が交わされたのだが、普通のバアチャンなら、みんな素直に「ハイ、ハイ」って感じで終わるんだろうけど、どう考えたっておかしいでしょ。

 

施設から車に乗るんだって玄関に横付け。

病院に着いて降りるんだって玄関に横付け。

外に出るって言ったって、ほんの一瞬。

帽子を被る時間なんかないよ。

そこで、私は夫に言った。

 

「お父さん、私、帽子は用意しない。

用意したって、使用する時間はないのよ。どうせ、すぐに帽子を取ってそれが邪魔になるからってお父さんに押し付け、あげく持って帰ってって言うに決まってる。そんな面倒なことやりたくないわ」

「あはは、そうだな。

ま、あの人の目的はそれじゃないから、持ってきてもらいたいだけだろ」

と、夫もそのことはわかっていた。

「俺は聞かなかったことにするよ。忘れたって言っておくわ」

 

「相変わらず策士だわ」

「あはは。頭いいなあ~」

「ふ~ん、そういうの、頭いいって言うんだ」

「常にどうやったら俺たちをこき使えるか、考えているんだから大したもんだよ」

「寂しいなら寂しいって言えばいいじゃん」

「そんなこと言える人じゃないだろ」

 

娘までもが

「おばあちゃん、見え見えじゃない。来てほしいんだね。寂しいって素直に言えば可愛いのにね」

と。

「お母さん、また引き取ってあげる?」

と、悪戯っぽく笑う。

すると、それを聞いた婿殿の方が、

「え?それは無理だろ」

って。

「私を病気にしたい?」

と、私も笑って返した。

 

でも、娘は最後にこんなことを。

「おばあちゃん、寂しいんなら一度行ってあげないといけないね」

 

子どもたちが優しい子に育ってくれていることが何より嬉しい。

 

 

実は、施設からの電話の内容はもう一つ。

そろそろようやく本格的に施設に入所できそうだとのこと。

それに伴う書類を送るとのこと。

とは言っても、1,2カ月はかかるんだろうけど。

「そろそろ入れそうです」

「いつですか?」

「1カ月後くらいです」

「1か月後?・・・ですか」

思いっきり、がっかりした声を出してしまった。(笑)

Source: 鬼嫁介護日記