認定審査で心がけていること

介護保険制度が創設されて以来、登別市の介護認定審査委員を務めている。

登別市の介護認定審査会は3つの合議体に分かれている。審査会は毎週木曜日の午後6時から市役所で開催されることになっており、審査は2つの合議体が並行実施して行う場合が多い。介護保険制度が始まった当初は、審査する数が今より少なかったため、審査のない週もあったが、今現在はそのような週はほぼなくなり、予定されているすべての週で審査が行われている。

それぞれの合議体の「長」は、医療系職種の代表として医師が務めることが慣例化しており、「副長」については福祉系の職種から選任されることも慣例になっている。

僕は地元の「社会福祉士会推薦委員」として、認定審査員会のメンバーになっているため、福祉職委員でありかつ委員としての経験も長いためか、「副長」の一人として選出されている。

合議体の審査では、「長」と「副長」が同時に審査に加わることはなく、かわるがわる審査会に臨み議長役となる。僕の場合、地元にいるのは1年のうち半分にも満たないため、審査会の予定が入っているのに、参加できない場合がある。その時は「合議体長」に日程変更をお願いしているが、いつも一方的に僕の方からの交代のお願いばかりなので恐縮している。新井先生いつもありがとうございます。

審議は更新認定及び区分変更認定のみの審査の場合は、議長を含め3名で審査し、新規認定ケースが含まれる場合は、議長を含めて5名で審査を行うことになる。

ということで今日は、僕が議長として参加する合議体が審査を行う日なので、それに備えて朝から資料を読み込んでいるところだ。今日の審査は新規認定がないので3人体制で行うことになっているが、同時刻に別の合議体が、新規認定を含めた審査会を5名体制で行う予定になっている。

1回の審査数は35件が上限である。今日は新規認定ケースが別合議体に回っているため、審査数は26件と最近ではあまりないくらい少ない審査数だ。

毎回審査会の時間は30分前後で終わることが多い。なぜそのような短い時間で審査を終えることができるかと言えば、参加委員がそれぞれ事前に審査資料を読み込んでいるからに尽きる。僕の場合は、資料読み込みに2時間程度の時間を費やすことが多い。

もし審査会に一人でも資料を読み込んでいない委員がいて、審査会の席上で初めて目を通すようなことがあるとしたら、審査時間はゆうに数時間に及ぶだろう。しかしそのことを理解している委員ばかりなので、事前に資料を読み込むだけではなく、議論となるであろう要点整理もしっかりしてくれている。

そのため一次判定判定の結果を変えることなく、すんなり判定ができるケースは、あっという間に審査が終わる。これは2次判定で変えることができるもの、変えられないものが何であるかという判定ルールをしっかり理解していることも関連している。

一次判定判定結果に疑問があるケースであっても、資料を読み込み論点が整理できているので、全員の疑問点は似通ってくる。そのため疑問となる情報を整理して、足りない情報は事務局に手元にある、「概況調査」に書かれていないかを確認し、お互いの疑問点を整理する議論もスムースに進むことが多く、審議が紛糾して結論を出すのに時間が掛かるということはあまりないし、仮に議論が割れた場合でも、論点が出し尽くされた時点で、決を採って審査結果に結び付ける。

ここは議長の進行にかかっていると言ってよい。だからと言って結論を急いで、審議が十分尽くされないという事態を生じさせてはならないことは十分理解している。

認定審査に対して、世間一般の人や介護関係者の中には疑念を拭い去れない人がいるかもしれない。例えばそれは正確な審議が行われているのかとか、給付抑制のために軽度誘導がされているのではないかという不振感を持つ人がいるという意味だ。

しかし少なくとも認定審査委員の中に、給付抑制のために審査結果を作為を持って誘導しようとしている人はいないと断言しておく。

そもそも要介護認定は、全国一律の基準に基づき、公正かつ的確に行われることが重要であるとされ、現在の審査は介護認定審査会委員テキスト2009改訂版(平成27年4月改訂)に基づいて、このルールの範囲の中で行われるもので、ルールを外れた審査が行われようとすれば、事務局からの指摘もあるし、そもそも全審査委員が定期的に研修を受けて、ルールからの逸脱がないようにしている。

むしろ審査委員が恐れているのは、認定結果がそのまま認定申請者の不利益につながらあにかということである。そのため一次判定で非該当とされたケースについては、本当にそのままで良いのだろうかということが慎重に審議される。この部分で機械的な処理はまったくと言ってよいほどないと断言できる。

そもそも一次判定はコンピューター判定であるし、それを変更するためには、それ相応の変更理由が必要である。つまり個人の裁量権はあくまで審査ルールの中の裁量でしかなく、何らかの忖度が行われる余地はないのである。そして過去から現在にわたって行政担当者から、給付制限的な判定への誘導や示唆があったという事実はない。公正・公平な審査に努めているのである。

審査委員の立場から言えば、申請者像と判定結果の乖離がみられる一番の原因は、そもそも人の暮らしを要介護状態区分というもので分けてあぶり出す方法には限界があり、認定ソフトがすべての人の状態像を正確に表すことは不可能だと思っている。

加えてほとんど判定資料にならない何も書いていない医師意見書だとか、特記事項を読んでも意味がわからない調査員の文章だとかが、それに追い打ちをかけていると感じている。

どちらにしても認定審査委員が、個人の価値観で認定結果を歪めることはないことを改めて断言しておきたい。きわめてまじめに審査しているのである。

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Source: masaの介護福祉情報裏板