介護の質を上げる工夫の具体例(入浴支援1)
介護事業者で働いている人の中で、人手が足りないことを理由に、現状のサービスの質を上げようとしない人が多すぎると思う。
人手がないと言えば現状に甘んじることがすべて正当化される傾向にあることも嘆かわしい。介護の質が一般常識より低いのに、それを変えない理由にも、「人がいないから」という理由が使われる。
できない理由を探し現状に甘んじていれば楽だろう。それでも仕事は何とかこなせるし、給料が減るわけでもない。でもそれで仕事に喜びや誇りを感じることができるだろうか。自分の家族に自分の仕事ぶりを誇りを持って語ることができるだろうか。そんな必要がないという人は、機械でも相手にする職業に転職したほうが良いと思う。そんな人は介護事業者にとって、人材ではないからだ。
人手が足りないこと自体についても、その理由を検証もせず、人手がないことを言い訳にして現状を変えようとしない人に、職業は微笑んでくれないのである。職業とは辛い要素もたくさんあるとはいっても、働くことは社会活動を続けることであり、それ自体が喜びだということを忘れないでほしい。
介護という職業を単に仕事として選ぶのではなく、生き方として選んだ人には、介護という職業自体が微笑んでくれることを知ってほしい。
例えば介護施設では、1週間に2回しか利用者を入浴させなくとも運営基準違反にはならない。
しかしそのことがいかに世間の一般常識とはかけ離れたことであり、そんな基準に甘えている介護施設とは、いかに低俗な施設であるかということについては、このブログ記事では過去に様々な記事を書いて批判してきた。
そのことを批判できる背景には、僕が総合施設長として管理していた特養では、利用者の希望に応じて、毎日でも入浴支援を行っていたという実績があるからだ。
以前にも書いたが、僕が週2回の入浴支援を、「囚人並みの基準でしかない」と思い立ち、改革に努めたのは介護保険制度開始の1年前のことである。
たまたまその時期に、僕が勤める施設が50床+併設ショート2床の特養から、100床+ショート12床+通所介護という規模に拡大を図る中で、職員も大量に募集し新人を雇用できる環境であった。そしてその1年後には介護保険制度がスタートし、措置から契約へと制度が大きく変わることがわかっていたというタイミングで、職員の意識改革とシステム改革が必要かつ可能な状態となっていた。
その時に利用者が希望すれば毎日入浴できるようにしようとし、週2回しか入浴していない人が地域にどれだけいるだろうかという視点から、その最低基準がいかに劣悪な基準でしかないかという意識を浸透させたうえで、新規に雇用する人も様々な改革に対応できる人数を勘案しながら採用を行なった。
そして看護・介護の配置規準3:1を上回るほぼ2:1の配置に近い状態にしたうえで入浴の改革も行った。だからと言ってその配置人数が決して十分ではないことは、現場の職員なら承知のことだろう。そもそもユニット型施設の場合、もともと配置規準は2:1が最低基準だし、非ユニット型であっても3:1の配置では業務が回らないために、必然的に2:1に近い配置を行っている特養がほとんどであろう。それは決して十分すぎる配置人員ではないのである。しかし人件費を無尽蔵に増やすわけにはいかないために、その時の収益と職員の給与水準と、目指すべきサービスの質をすべて秤にかけて、配置人員を割り出したわけである。
その中でいかにシフトを工夫し、業務の仕方を工夫して利用者ニーズに対応するかという、「知恵」が問われてくるわけである。現状の人数でも業務が回らないから、これ以上のことは一切できないという、知恵のない思考を取らないことが業務改善には必要なのである。努力という思考回路を停止した先には、停滞と退廃しか待っていないのである。
例えば週2回しか入浴支援を行わない施設では、その2回の入浴日に全員をお風呂に入れなければならない。100人の介護施設だとしたら、週2回の特定曜日に体調不良者を除いて、100人全員を入浴させるわけである。それは入浴支援という業務を、重労働化させる最悪の方法と言っても良い状態で、それでは食事介助と排泄介助を行う以外には、入浴支援しかできなくなる場合が多い。
しかし毎日が入浴日であれば、入浴支援も1日のルーティンワークの一つにしか過ぎず、職員の意識は、入浴支援も他の支援行為と同じように毎日行うべき普通の行為というふうに変わっていく。そしてそこでは、1日に入浴する人の数が分散したことにより、1日中入浴支援だけに費やすという業務がなくなり、それに付随するストレスが消えていく。
実際に、毎日入浴支援を行うようになって以後に採用した介護職員は、それが普通だから、そのことが大変だと思うことなく、当たり前の介護業務として不平・不満もなく、黙々とごく自然にその支援行為に当たっている。
このように毎日入浴支援を行うと言っても、100人全員が毎日入浴を希望するわけではなく、多くの人は、「今までと同じく週2回で良い」と言ったりする。「せっかく毎日入浴できるようになったのですから、せめて1日おきにでも入りませんか。」と投げかけても、頑として週2回しか入らないという人も多い。
当然のことながら毎日入浴支援を行っている施設では、1日に入浴支援を行う人数は減るのだから、1日の中で入浴支援にかける時間も、入浴支援を行う職員の人数も少なくて済むことになる。他の業務に係る職員の時間や人数が増えるわけである。そしてシフトを工夫して、入浴支援の時間に集中的に人を配置すれば、介護職員の人数も増やさなくても業務が回ったりするのである。
そもそも入浴支援で一番大変なことは、「入浴拒否」する人への対応だ。3日も4日もお風呂に入っていないのに、「さっき入ったばかりだから、もう入らない」という人を、いかになだめすかして入浴してもらうかというところに、膨大なエネルギーと時間が費やされるのが常だから、素直に入浴してくれる人に関しては、入浴支援業務のちょっとした工夫で、難なく毎日の入浴支援は可能になるのである。
そのちょっとした工夫とは、サービス提供方法の効率化を見直して「不便な方法」をあえて採用するということかもしれない。
そのことについてはこの記事が長くなったので、明日続編を書いて具体的に内容を示そうと思う(明日に続く)
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Source: masaの介護福祉情報裏板