思い出す「私は何も言ってない!何もしてない!」
夫に、「使ったらちゃんと元に戻してね」
と声を掛けると、無意識にやったことなんてすぐに忘れる。
なので、
「え?俺?俺はやってない」
という返事を何度聞いたことだろう。
それを聞くのが嫌なので、最近は黙ってこちらで戻しておく。
喧嘩のタネは作らない。(出来た女房、アッパレ!)
つくづくDNAは受け継がれていると思うよ。
ナニサマは不都合なことが起きると、決まってダンマリを通すか、あのキョーレツな一言を発する。
「私は何もやってない!」
「見たことも触ったこともないわね!」
部屋には二人しかいない。
私がやらなければだれがやる?
それでも、言い通すナニサマはほとほとすごい!
自分で言い出したことでも、ゼッタイ自分は言ってないとうそぶく。
それで、どれだけ振り回されてきたことか。
まだ次男が結婚する前のこと。
家族で行く「仙仁温泉」へナニサマも連れていくことになっていた時だった。
母親孝行の夫は、連れていく気満々だった。
ところが、長時間のドライブには耐えられなくなっていたナニサマは、なかなか言い出せないでいたようだ。
行きたい気持ちの方が強かったからであろう。
ところが、週に一度来てくださっていたヘルパーさんには、「行きたくない」と訴えていたのだ。
なんとケアマネさんにまで、コソッと訴えていたみたいだった。
それで、ナニサマの気持ちを再度確かめると、
「トイレが心配だから」
と言い出したので、それでは今回はお留守番ということになった。
ところが当時は、まだショートステイを使ったことがなかったので、そこに預けるという選択肢も思いつかなかった。
忘れもしない、5月のGWでの話だ。
そこで、富山の義弟夫婦に頼んで家に来てもらうことになった。
ちょうどGWなので、こちらに来る予定になっていたからだ。
さて、旅行前の2,3日前のこと、私たちがプロゴルフの大会を見に行っているときのことだ。
家では次男が、ナニサマの面倒を見てくれていた。
するとそこに義弟からナニサマに電話があって、
「GW行くから食べたいものあったら言ってよ。作ってあげるから」
と言ってきたそうだ。
その一言に喜ぶならまだしも、温泉に行けなくなった自分が急に悔しくなったのだろう。
次男に
「私は行かないなんて一言も言ってない!」
が始まったそうだ。
次男が困って、ゴルフ場にいる私たちに電話をかけてきて、
「おばあちゃん、温泉に行くって言ってるよ」
となったのだ。
慌てて帰って、真意を確かめると、やっぱり
「私は行かないなんて、一言も言ってない!」
を繰り返すばかりだった。
夫はボケたぐらいしか思ってなくて、仕方がないと思って、すぐに義弟に電話を入れて、その旨伝えたのである。
この事件は、一生忘れませんわ。
ヘルパーさんやケアマネさんまで巻き込んで、「行かない」選択をしたにもかかわらず、最後の最後に義弟まで巻き込んで「行く」宣言をするナニサマの「何様ブリ」。
この人には、どれだけ同じようなことで振り回されたかわからない。
だから、施設に行く話もいつ寝返るかわからない恐怖心を抱えての決定だったわけだ。
今回に限っては、本人の運動機能が著しく衰えたおかげで、すんなりといったけど、ホント「朝令暮改」なんて日常茶飯事。
今でもナニサマの
「私はやってない!」
「私は言ってない!」
を思い出すたびに、この人今度生まれ変わったら、詐欺師かペテン師だわと思ってしまったわ。
Source: 鬼嫁介護日記