93の姑は何思う
夫の知り合いに、画家の女性がおられる。
独特の絵を描かれる方だ。
クシャクシャにした和紙に、人物画を描かれることが多い。
我家にもその方の作品がいくつかある。
世が世なら、一国一城のお姫様だったという家柄。
たくさんの財産を持っておられるから、好きなことをやってこられたのかもしれない。
その方ももう80をとうに過ぎられた。
今はボランティア活動にもいそしんでおられるようだが、その活動が国内だけではなく海外にも及ぶ。
最近は歳もあってか自粛し始めているようだが。
1年中、とにかくあちこちと駆け回っているという人だ。
今年も来週早々、ミャンマーに出かけるとのこと。
帰ってきたら、今度はウィーンに行かれるとのこと。
意気揚々と語るその方に、さすがに夫も、
「すごい人だな~。80過ぎたオバアサンとはとても思えない」
と感心していた。
ご本人は日舞もやり、鳴り物の「鼓」もすべて名取クラスである。
芯からの芸術家かもしれない。
本人は明るくあっけらかんとした性格だが、人に対しては気配りのできる素晴らしい女性である。
私はいつも、元気で未だに現役として動き回っている高齢者に出会うと尊敬の念を抱かずにはいられない。
そして、今一人でショート先にいるナニサマのことをふと考える。
毎日、どんな気持ちで生活しているのだろうか。
毎日食べるものはちゃんと用意してもらって、洗濯物もしてもらいいつも清潔な服を着ていられる。
清潔な寝具の中で好きな時に寝られる。
これさえ確保されていれば、どこにいても同じなのかなと。
家族の中で暮らすことの楽しみや、刺激はもう不要になったのだろうか。というより、もう家族と喜びを共有したいという欲望はなくなったんだろうなあと思われる。
今は静かに余生を送りたいと思っているのだろう。
そんな気がした。
私でも、高齢になって自分の能力が若い人たちとうまく噛み合わなくなったら、静かに自分の時間を楽しむ方を選ぶような気がする。
そう思うことで、自分の取った行動を肯定している自分がいる。
Source: 鬼嫁介護日記