関係性ができていれば「タメ口」が許されるのか?
(介護相業者にサービスマナー教育が求められる背景から続く)
OJTに入る前に座学による新人教育を徹底して、「丁寧語」で会話できる職員を現場に送り出しているという介護施設の管理者の方で、「当初は丁寧語を使っていたのが、慣れてきて数カ月後には入居者の皆様に対してタメ口になっている姿を見て憤りを感じる。」と嘆かれている人がいる。
新規で採用した職員が当初は丁寧語を使っていたのが、慣れてきて数カ月後には入居者の皆様に対してタメ口になってしまうのは至極当たり前だ。それは実によくある話で、新人をいくら教育したところで、先輩職員が日常的に、「タメ口」で利用者に接している職場の中で、新人がそれに染まらずに、丁寧語を使い続けることは著しく困難である。・・・というか不可能だ。
そうしたマナー意識が欠如した職場環境では、タメ口を使う先輩職員が、丁寧語で利用者に接する後輩を、気取っていると揶揄したり、それでは親しみやすさが伝わらないなどと、わけのわからない下衆(げす)指導をしたりしている。
それはあたかも無意識のうちに後輩の清々しい姿を消させて、自分と同じ下衆の姿を押し付け、自らの醜い姿をカメレオンのように全体の醜さの中に埋没させ、隠れ潜んでいくかのようだ。
さらに一部の介護事業関係者の中には、利用者に丁寧語を使うことに、「気恥ずかしさ」を感じるという人がいる。
その感覚は保険・医療・福祉・介護以外の業界で働いた経験のある人からは、全く理解できない感覚である。他産業では顧客に丁寧語を使わないという選択肢はないので、そのような行為に気恥ずかしさを感ずることの方がおかしいと思うし、顧客に丁寧語を使うということに何の違和感も持ちようがない。
福祉・介護業界ではないところから介護業界に転職した人たちの最大のカルチャーショックは、介護関係者の利用者に対する「タメ口」であり、それは異様な姿にしかみえない。他産業では、顧客に丁寧語を使いこなせない職員は、「使えない職員」であり、その姿の方がよっぽど恥ずかしいと思われ、丁寧語を使いこなせない職員は、プロ意識が欠如しており、スキルがないと評価される。
しかし介護業界もそろそろその世間の非常識に気が付いて、顧客にタメ口で接することが、フレンドリーな関係作りにつながるという奇怪な屁理屈の恥ずかしさに気が付くべきである。
関係性ができているから、「タメ口」は失礼に当たらず、むしろ会話を円滑にすると言い訳する馬鹿がいなくならないが、介護事業者における利用者と職員の関係とは、友人関係ではなく、あくまで顧客とサービス提供者という関係であり、友人関係を持ち出す輩はプロの仕事ができない人間だから、この仕事で収入を得る資格は無い。
そもそもなぜ関係性ができていれば、態度や言葉が乱れても良いというのだろうか?サービス利用者は、本当にくだけた態度を望んでいるというのだろうか・・・しかもすべての利用者が・・・。しかし仕事である以上、お客様に不快な思いを与えないための最低限のルールはあって当然であり、それは労務管理上、必要不可欠と言える。関係性などロいう言い訳を持ち出しても始まらないのである。
だからこそOJTの中で、利用者の丁寧な言葉遣いで接し、適切な行動に結び付けるような、見習うべきプロの姿を示すことのできない人は、リーダーの位置からはずれなければならない。顧客にマナーを持って接することができない、「リーダー」は介護事業者の恥の象徴でしかないからだ。
前述したように利用者に対する職員のサービスマナーが欠如している職場では、その現状を変えないで新人教育をしたところで無駄になってしまうのだ。だからこそ利用者に直接接する機会の多い看護・介護現場のリーダーを徹底的に教育して、介護現場でマナーを持って利用者に接する教育を行う環境を作り上げなければ、サービスマナーは徹底しない。
そのためにサービスマナーを教育する対象は、まずは現場職員であり、特にリーダーとして他の職員に影響力のある職員が、職場内で一番マナーを護る状態に持っていく必要がある。
新人教育に結び付けるリーダー教育を行い、その教育課程に実効性を与えて、新人を適切に指導できる現場リーダーを育てない限り、介護事業者におけるサービスマナーは確立不可能だ。
この時、介護リーダーには、職員の個性に応じて、時には丁寧語で対応しなくても、顧客対応として逸脱した行動にならない限り許される的な、変な妥協を一切しないという覚悟が求められるのである。(参照:上司の寛容心が改革を頓挫させる)
だからこそ、そうした介護サービスの実態をわかっている人にしか、介護事業におけるサービスマナー研修で、実効性のある講義はできないのである。他産業でいくらサービスマナー教育の実績があると言っても、他産業の人の常識からは想像もつかない劣悪なマナー意識が存在するという事実を知らない講師には、この現状を変えるような講義は行えない。
例えば他産業のサービスマナー研修では、お辞儀の仕方や電話の応対等を教えることはあっても、「利用者は顧客である」と教えることはまずありえない。それは当たり前だからである。「顧客である利用者にタメ口で接してはならない」とも教えない。なぜならそれは言うまでもない当然のことだからだ。
介護事業関係者に対するサービスマナー研修では、この部分から徹底的に叩き込む必要がある。というよりこの部分の意識転換を徹底的に図らないと、そのあとの具体策に向かう、「動機づけ」さえ生まれずに、講義は空しいものになってしまうのである。
だから介護事業のサービスマナーに関して言えば、平林都さんを連れてきても、エドはるみさんを連れてきても無駄である。
介護の場でのサービスマナーが欠けている現状を知る講師であり、そうした現状に介入して改善させた実績のある講師ではないと、聴いて終わりというだけの何も変わらない講義になってしまう。そうであれば、サービスマナーを持って利用者対応ができるように、現状を改革できる講師役としてふさわしい人物とは誰かと考えた場合、そういう職場を創りあげ長年そこで経営をしてきた実績がある人以上の人物はいないはずだ。それは議論する必要もないはずである。
ということで、「介護サービスにおけるサービスマナー研修」の相談はお気軽にメール等で連絡いただきたい。受講人数は何人でも構わない。特にこの研修は、法人もしくは事業所単位で行うことも多いので、ごく少人数の受講者という状態も珍しくはないので、一度相談願いたいと思う。
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Source: masaの介護福祉情報裏板