国が誘導する「自立支援」に洗脳される先に起こること

平成最期の大晦日となる2018年の最後の日を、このブログ読者の皆様はどのように過ごしているだろう。

読者の方々は介護関係者の方が多いのだから、暦に関係なく働いている人も多いことだろう。そうした皆さんがいるおかげで、この国の様々な人の暮らしが支えられていることに誇りをもっていただきたい。そして今日も働いてくれている人に心より感謝を申し上げたい。

すでに休暇に入って、年末・年始はゆっくり休めるという人もいるだろう。どうか英気を養って年明けの仕事に備えていただきたい。どちらにしてもすべての皆さんにとって来るべき新しい年が良い年になることをお祈りしたい。

我が家は障害者福祉事業者に勤める長男が、一昨日の夜遅くに帰ってきて3日まで実家で過ごすことができるが、北電知内発電所に勤務している二男は、年末年始も出番で、一家3人だけの正月を迎える。

僕は年末に関係なく新年早々に出版予定の本のゲラを校正したり、講演スライドを作成したりして、あっという間に時間が過ぎていく状態だ。今日も朝からPCの前に張り付いて、気が付けばお昼になろうとしている。おなかがすいたので飯でも食おうかと思いつつ、その前に今年最後のブログ記事を書こうかと思い立ち、この記事の更新に取り掛かったというわけである。

ところで仕事に関する連絡は時期に関係なく入ってきており、昨日も来年予定している講演のテーマが決まったという連絡が入った。その講演とは、31年3月9日(土)13:30~16:30にコンパルホール(大分県大分市)で行われる、「個別ケア研究会主催講演会」での講演である。

そこで3時間お話しするテーマは、『揺らぐ介護理念 ~介護とは何か?~』に決まった。受講対象者の中心は介護支援専門員となる。

大分県といえば、和光市と並んで国がモデルとする「自立支援介護」のメッカでもある。その自立支援介護のおひざ元で、このテーマで話をすることになる・・・。

そこでは今後の介護保険の流れと、それにより起ること、想定される利用者と介護現場への影響等について解説することになるだろう。

2021年の報酬改定では、自立支援介護という方向で、新しい加算が各種サービスに新設されることになる。居宅介護支援におけるケアマネジメントの方向性も、国が言うとことの「自立支援」にシフトする方向に誘導される。今年度に導入された生活援助中心型サービスの一定数以上のケアプランの届け出義務はその序章である。

大分県はその流れに沿った方向で介護支援専門員などを指導しており、国の推奨する自立支援介護の先進地というわけである。そうであれば当日の講演内容とは、大分県が進めている自立支援介護とは、本当に大分県の人々の暮らしを護ることができるのかを問い直すものにならざるを得ない。

後期高齢者で、身の回りはなんとか自分で出来ている方であっても、家事能力が衰えることが生活障害となって独居が難しくなる方がいる。このとき家事能力の衰えを防ぐという発想のみでケアサービスを提供しても何の課題解決に結びつかないケースがある。自立支援という価値観だけでは解決しない問題もあるのだ。

できることを続けながら、できないことは誰かに頼って、暮らしの質を担保するという視点がないと、毎日頑張ってつらい思いを日常だと勘違いしなければ生きていけなくなる人がいる。

そもそも出来る能力に着目してサービスを結びつけようと発想が、出来ないことはだめなことだというという発想になっては困るのだ。生活課題はしっかり捉え、それに対するアセスメントをすることはネガティブではない。

出来ないものは出来なくて良い。出来ることをどのように生活の質に繋げていくかというのが自立支援ではないか。ここは頑張るけど、ここは助けてもらいましょうという発想がないと高齢者の暮らしは、ひどく辛いものになるだろう。それは長寿を苦行に変える行いでしかない。

そのような考え方を大分県の介護支援専門員さんなどが集まる場所で話してよいのかを考えながら、講演の構想を練っている。国の考え方に全面的に迎合する話はできないから、大分県の指導の方向性ともガチンコでぶつかるかもしれないとも考えている。

特に和光市で「介護保険制度から卒業」させられた人の後追い調査では、その1割の方が自費で、更新認定前と同じ介護サービスを利用しているとされる調査結果も示されている。そうであれば自立支援の結果として、要介護更新認定の結果が「非該当」とされて、介護保険サービスを使わなくてよいとされた「卒業生」の一部は、そのことを快く思っていないという意味である。介護保険からの卒業という名の下で、保険給付サービスが利用できなくなったことは、「本意」ではないということである。

それって自立支援ではなく、給付抑制ではないのか?そんな行為に介護支援専門員という有資格者が何の疑問もなく加担してよいのだろうか。

障害があり、生活の一部に支援が必要な人が望み、目指すものは何なのか。その人たちがすべて自立を支援されなければならないのかを考えたとき、問題提起のために下記のようなスライドを作ってみた。
3/9大分県個別ケア研究会主催講演会
このスライドを通じて僕が訴えることは何かということは、当日の講演のお楽しみとさせていただきたい。

この講演は資料代として参加料が500円必要になるが、どなたも参加できるオープン講演であるそうだ。講演案内は年明けの1月下旬になるそうであるが、正式にアナウンスされたときに、表の掲示板などで案内させていただこうと思う。お近くの方は是非会場までお越しいただきたい。

僕は今日これからゲラ校正の最終作業にかかって、できれば今日中に作業を終えたいと思っている。そのあと明日の元旦のうちに講演スライドを一本仕上げ、2日と3日は仕事をせず、朝から箱根駅伝を見ながら酒を飲みたい。そして4日と5日に残っている講演スライド2本を仕上げ、6日と7日で連載原稿を書く予定だ。今日が勝負である。

それでは読者の皆様、今年もお世話になりました。僕の勝手で乱暴なブログ記事を読んでいただき感謝です。でも来年も読者のためではなく、自分のためだけにここに思いを書き続ける予定です。勿論新年の最初の記事は、明日の元旦に書く予定です。

それでは皆さん、良いお年を迎えてください。皆さんにとって来るべき新年が幸多い年であるように祈っております。

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Source: masaの介護福祉情報裏板