日本介護支援専門員協会はきちんと検証・説明責任を果たしてください

昨年4月の介護報酬改定から10カ月が過ぎようとしている今、そろそろその影響と結果が見えてきつつある部分がある。そこには早速検証が必要になる問題も存在するように思う。

例えば一定回数以上の生活援助中心型サービスを組み込んだ居宅サービス計画について、市町村に届け出義務が課せられたルールの検証も必要だ。

このルールは、財務省の調査資料(2017年6月公表)で、生活援助の利用は全国平均で月9回程度なのに「中には月100回を超えて利用」する例があるとして、最多で月101回の利用例がある北海道標茶町直営の居宅介護支援事業所の主任ケアマネジャー(精神保健福祉士)の居宅サービス計画がやり玉に挙がって、それをきっかけとして新設されたルールである。

しかし標茶町の当該計画は、精神疾患を持つ要介護3の女性の計画で、体調を崩して入院した後、精神状態が不安定になったために、「どうしたら落ち着いて生活できるか」として、担当者会議を開きケアプラン再作成した結果、昼と夕方の間にヘルパー訪問を増やし、より細かな見守りをしていくことになり回数が増えたもので、のちに町の検証でも適切な計画であったと認められている。つまり当該計画は、糾弾すべきプランではなく模範とすべきプランであると判明しているのである。

そういう意味では、市町村へ届け出義務が新たに課せられた居宅サービス計画も、正当な理由をきちんと説明して適性と認められれば良いだけだと言うこともできるわけであるが、介護支援専門員にとては、いちいちそのプランを理由を添えて市町村に提出する手間と、場合によっては地域ケア会議等に呼ばれて、計画の正当性を説明する手間が増えているわけである。なおかつ市町村によっては、正当な理由を一切認めず、一定回数以上の生活援助を組み込んだ計画を不適切と決めつけて、計画担当ケアマネジャーを糾弾するという、「介護支援専門員の公開処刑」と揶揄される状態も見られる。

このような状態を許しておいて良いわけがない。

しかしそもそもこのルールは、日本介護支援専門員協会が、意見書の中で、「特定のサービスの頻回な利用については、国民健康保険団体連合会のデータを活用する等、焦点化したケアプランチェックや地域ケア個別会議等による検討をお願いしたい。 」と、積極的に届け出を認めるように求めたものである。

このことに関連して同協会の小原副会長は、2017年12月14日07時00分に発信された、シルバー新報のインタビューに答えて、「一定以上の頻回なサービス利用などについては、地域ケア会議などの場でプランがチェックされる仕組みも必要だろう。」と語っている。

しかしこの考え方はおかしい。そもそも適正な計画のために存在しているのが、ケアマネジメントという援助技術であり、市町村のチェックがないと計画の正当性が示されないという論理は、ケアマネジメントの否定の論理でしかない。介護支援専門員の職能団体ともあろう協会が、そのような論理展開を行うことはあってはならない。そのようなことに考えが及ばないこの団体の執行部は、頭脳としての役割を果たしていないといえる。ケアマネジャーの資質云々を問う前に、日本介護支援専門員協会執行部の、役員としての資質を問えと言いたい。

そもそもこのチェックの導入とは果たして介護専門員の、「現場の声」を代表しているのか?大いに疑問である。

また、昨年の報酬改定に先駆けた議論の中では、特定事業所集中減算についても同協会は、その廃止にブレーキをかける結果をもたらした。

この減算については、会計検査院が疑問を呈し、「公正中立を確保するうえで、集中減算は有効な施策ではない」と指摘し、2016年3月に同院が国会へ提出した報告書では、「一部の事業所では減算が適用されないように集中割合の調整を行うなど、公正中立を推進する合理的な施策といえず、むしろ弊害を生じさせる要因となっている」とまとめた。これを受け同年5月の参議院決算委員会で、「ケアマネジメントの公正中立の確保に向け、現行施策の抜本的見直しも含め、そのあり方を十分に検討すべき」との決議がなされ、集中減算の廃止が検討された。

しかしこの流れを変えたのも日本介護支援専門員協会であった。前掲のインタビューで小原副会長は、「当協会では医師の関与や多職種協働が担保されている場合は対象から除外することを求めている。まずは利用までのプロセスに必ず主治医が関わる医療系サービスは対象から外すべきだと考える。」と述べ、同減算の全面廃止に反対し、福祉系サービスの減算継続を求め、前掲の意見書にもそのことを記している。

まったくもって意味のない減算を残したものであるとしか評価できない。この減算を残したことでケアマネジメントの質の担保が図られているのか。改訂から半年たった今、同協会は改めてそのことを検証・評価する必要がある。

また日本介護支援専門員協会の意見書では、居宅介護支援事業所の管理者要件について、「管理者を主任介護支援専門員とすべきと考える」としている。

その理由は、主任ケアマネになるためには、その前にケアマネ実務5年が必要とされて、その経験が質の担保になると小原副会長は論じている。

馬鹿も休み休み言えと言いたい。経験が質につながるなんてことがないことは、過去の様々なケースや、現状のケアマネジメントの証明している。例えば、「訴訟概要・日本初のケアプラン作成義務についての判例1」で示した裁判で、ケアプランを作成していないという致命的な問題で敗訴したケアマネジャーは、実務経験5年以上の主任ケアマネジャーだぞ。このような例は枚挙にいとまがない。経験と質は比例しないというのは、子供でも分かる論理だ。

しかし日本介護支援専門員協会が加担して決定されたことによって、居宅介護支援事業所の管理者を主任ケアマネとするルールは、2021年度から完全実施(経過措置は3年のみ)されることになる。しかし現在約4万件ある居宅介護支援事業所のうち半数以上の管理者が主任ケアマネ資格なしの状態であり、今後約2年半の間に全事業所の管理者が資格取得することは困難である。

そのため資格者を引き抜こうとする動きも広がって、現在主任ケアマネがいる事業者も安心できない状態が生じかねない。・・・が・・・しかし、そもそもこの資格要件変更は何のためなのか。主任ケアマネがいない事業者は、主任ケアマネがいる大きな事業所に吸収合併されることを見越したものであり、それは即ち居宅介護支援事業所の大規模化への布石ではないのか?

日本介護支援専門員協会はそのことにも加担し、一人親方の居宅介護支援事業所をつぶすことに手を貸しているとしか言いようがない・・・。そのことは2021年までにしっかり検証されねばならない。

その前にケアプラン届け出義務と、特定事業所集中減算の福祉系3サービスの継続適用について、日本介護支援専門員協会は、それを推奨した意見書を書いたという責任があるのだから、それらによってケアマネジメントの質の担保が図られているという証明をしなければならない。

少なくとも協会員に対しては、その評価を明確に示す責任があり、それは同意見書を実質的に仕上げた小原副会長によって行われる必要があるだろう。

ということで小原クン、逃げずにきちんと説明責任を果たしなさい。

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Source: masaの介護福祉情報裏板