職員が定着する環境要因としてのサービスマナー

皆さんは、自分の職場の中で、他の職員が利用者に対してぞんざいな言葉かけをしている姿を見て、その会話を聴いて、イラつくことはないだろうか。

顧客である利用者に対して、タメ口で話しかける上司や同僚の姿を見て、これでは適切な言葉遣いができる後輩が育たないとがっかりする場面はないだろうか。

先日僕のフェイスブックには、「人間的にも素晴らしい方が、赤ちゃんをあやすように言いくるめられる様を見て、怒りを通り越しました」というコメントが書き込まれた。そんな風に人生の先輩である高齢者で、かつ介護サービスの場においては顧客以外の何ものでもない方々に対して、礼儀のない対応を従業員の存在を疎ましく思っている人は多いのだ。

心ある人々は、介護の現場で飛び交う無礼な馴れ馴れしいタメ口に舌打ちし、マナーのかけらもない利用者対応を苦々しく感じ、どうにかしたいと思っているのだ。

しかしマナーのかけらもない対応を何とも思わず、タメ口が親しみやすい言葉と勘違いしている無能者は、そんなことにも気が付かないから、それを直そうという動機づけを持たない。直す気がないから直らない。だったら排除するしかないのだ。

介護サービスをはじめとした対人援助について、その行為がいまだに「施し」という意識から抜け出せない人は、利用者を「顧客」とは意識できない。介護を受ける人は顧客とは言えないだろうと、馬鹿げた意識を持ち続けている無能者が存在する。

しかし「顧客」の定義づけは、自分たちが提供するサービスを購入してくれる人のことを言い、すでに購入してくれている人だけでなく、購入の可能性がある人などもすべて含めて「顧客」とみなすことができるというのが常識となっている。

では介護事業はどう考えるべきなのだろうか?それも簡単なことだ。目にみえない介護という行為を、「介護サービス」としてお金を払って利用する人、これから利用しようとする人は、すべて顧客なのだ。

お金を払ってというが、それはサービスを購入する人が自身でお金を払うことに限定されない。誰かがその人に替わってお金を払ってくれる場合も、サービスを利用する人そのものが顧客となるのである。よって全額保険給付対象の人であっても、その人がサービスを利用することで、保険費用が給付され、お金がサービス提供主体に入るのであれば、サービスを利用する人は顧客にほかならないのである。

そのようなことも理解できない連中によって、介護サービスの質が停滞してしまっているのが、この職業を「底辺化」させるリスクの一つにもなっている。そいつらを排除する気構えがないと、いつまでたっても介護という職業の民度が高まらないのではないだろうか。

もうすべての人間を教育して何とかなるという幻想は捨てようではないか。

僕が関わってサービスマネーを重要視して事業経営している職場では、丁寧語を使いこなせない職員は、どんなにシフト勤務ができても、どんなに仕事をこなせても、事業者が求める仕事の質を担保できないとして、一定期間に面接を行って改善を求め、改善できない職員は、「いなくて良い職員」としている。その結果、サービスマナーを意識できない職員、丁寧語を使いこなすことができない職員は、職場から消えていくという結果に結びついている。

それで人がいなくなったかというと決してそうではない。

そういう職場には、丁寧語を使いこなせず、利用者にタメ口で無礼に接する職員を苦々しく思っていた職員が、そうした職員がいなくなることでストレスがなくなり喜んで仕事をしてくれるようになる。そうした職員の定着率は確実に上がるのである。しかもそうした職員などの口コミや誘いによって、他の職場で上司や同僚の、礼儀ないふるまいにストレスを感じていた職員が、そうした職場で働きたいと転職してくるケースが増えている。

そこでは、利用者に何かを頼まれたときに、介護職員がごく自然に「かしこまりました」という言葉を使っているのだ。それも全員である。そういう言葉遣いができない職員は、他職員からスキルがないとみなされるだけではなく、自分自身の態度や言葉が恥ずかしくなって、他の職員のように接客用語を使いこなせるように頑張るか、あきらめて辞めていくことになる。

しかし他の職業では、アルバイトの外国人や高校生等が使いこなすことができている言葉遣いや態度にしか過ぎないことを、それができないと辞めていく人は引き止める必要もない「人員」にしか過ぎない。そんな人間が辞めてしまうことをもったいないと思う必要もない。それは職場の健全な自浄作用と言えるのだ。

その人がいなくなることで、そんな人を疎ましく思える人材がそれ以上に張り付く結果になるのである。

結果的にサービスマナーを重視する介護事業者にとって、求める人材が定着し、求める人材が張り付いてくるという結果につながるのだ。無能者を排除して一時的に人員配置が厳しくなっても、すぐ先にそれを解消してなおかつ人材が職場をよくするというメリットをもたらす結果になっているのである。これも事実として存在していることであり、机上の空論ではない。

介護事業における、「サービスマナー」の確立とは、職業倫理という意味だけではなく、事業経営上のリスク管理としても欠かせなくなりつつあることは、文字リンク先の多数のブログ記事に書いて指摘してきた。

そんなことも含めて介護事業におけるサービスマナー教育と、その実践は必要不可欠だし、利用者に丁寧語で話しかけるという原則を決して崩してはならないのである。

そうであるからこそ各種職能団体で、職場単位で定期的にサービスマナー研修を実施することが重要となってくる。下記の画像は、来週大阪で初めて行うサービスマネー研修のために作成した講演スライドの1枚である。受講者の心に響いて、実践できる方法論を職場に持ち帰らせることができると自負しているので、サービスマナーを教育する講師が必要な場合は、是非相談ください。
例外は無法地帯を生む

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Source: masaの介護福祉情報裏板