3号被保険者創設の布石が隠されている制度改正

介護報酬と診療報酬のダブル改定があった次の年は、本来ならば大きな制度上の変更のない年になるのが普通だが、今年の10月に消費税が引き上げられるのに伴って、介護報酬も診療報酬も引き上げられる。

両報酬はこれで2年連続のプラス改訂となるが、それは2020年の診療報酬改定、2021年の介護報酬改定には大きな足かせになる。今年の報酬改定は消費税の引き上げに対応したものでしかなく、事業者の収益増にはつながらないにも関わらず、プラス改訂であるという事実のみを持って、財政事情が厳しい中で介護報酬や診療報酬が3回連続の引き上げになるのは、「けしからん」という論理で引き下げが図られる可能性が高いのである。

介護報酬については区分支給限度額も引き上げられ、補足給付に関連する食費と居住費の標準費用も引き上げられる。それに加えて「特定処遇改善加算」という大きな改訂がある。(参照:あけてびっくりの新処遇改善加算

その分の引き上げも含めて考えると、2021年の介護報酬改定は、「自立支援介護」としてのアウトカム評価を加算に反映しようという動きと相まって、非常に厳しい改定になるだろう。

ところで先の報酬改定や、その前年の制度改正においては、次の2021年改訂につながる布石が所々にちりばめられている。そのことにお気づきだろうか?

昨日の神戸講演でも話させていただいたが、今後の介護事業の経営戦略を練る立場の人たちや、制度の今後の動きを見据えながら業務にあたる専門家の皆さんには、制度改正と報酬改定をきちんと区分して考えながら、そこにちりばめられている今後の布石や橋頭保とは何かということも思慮に入れてほしい。

ということで今日は、昨年の介護・診療ダブル報酬改定に先駆けて行われた制度改正・地域包括ケアシステム強化法(2017年)の中の、次の改正への布石と思われることについて、僕なりに解説してみたいと思う。

例えば地域包括ケアシステム強化法(2017年)によって創設された「共生型サービス」の意味をどう考えるかも重要である。

それは単に3つのサービス(訪問介護・通所介護・短期入所生活介護)の中で、高齢者と障害者のサービスが同時一体的に提供されるようになっただけではない。制度は統合できなくともサービスは統合されたという点が大きいのだ。

厚労省には、将来的に障害者の福祉サービスを介護保険制度と統合したいと考えている人が存在する。それは2号被保険者の年齢を20歳まで引き下げたいと考える動きと一体となっている。しかしそのことに障害者の方々の理解が得られず、障がい者団体の強力な反対運動があって、実現の目途はたっていない。

そのような中で共生型サービスが創設されたわけであるが、これによって高齢者の福祉制度と障害者の福祉制度は、両者を統合しなくとも、二つの制度の類似サービスを同時一体的に提供することが可能になったわけである。そうであればその中で、両サービスの共通項・互換性を増やしていくという論理で、自己負担が増やされたり、給付費用が削減されたりする可能性があり、今回の共生型サービスの創設はその布石・橋頭保となり得るものである。

そしてこのサービスによって、高齢者と障害者が同時一体的にサービス提供を受けることに馴染んでくるのだから、その先にある狙いとは、被保険者の拡大による保険料負担年齢の拡大であることは明白である。

仮に2号被保険者の年齢を20歳まで引き下げられない場合には、保険料を3段階に分けて、20歳~39歳の新保険料を創設しようという動きも出てくるだろう。

つまり2号被保険者の年齢を20歳まで引き下げることはできないとしても、それに替えて20歳から39歳までの新3号被保険者を創設し、2号被保険者より安い保険料負担で被保険者に組み込もうとする意図がそこには隠されているということだ。

2021年の介護報酬改定論議の中では、サービス利用時の自己負担割合が現在1割(スタンダード)、2割(一定額以上の所得者)、3割(現役並み所得者)の3段階に分かれているが、このうち1割負担を廃止して、スタンダードの負担割合を2割にするという議論が展開される。それは2021年にも実施される可能性があり、それが実現した先には必ず保険料負担の年齢引き下げ論議が起こるのである。

そのした布石が、そこかしこにちりばめられていることを意識して、先の改正と報酬改定を振り返ってみれば、そこに新たな経営戦略が開けてこようというものだ。しかしこれ以上は、ブログには書けないのであしからず・・・。

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Source: masaの介護福祉情報裏板