特定処遇改善加算によってケアマネがいなくなる?

10月に消費税が10%に引き上げられる際に、増税分を財源として政府パッケージとして新設される「特定処遇改善加算」については、3/19(火)に行われる、「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議」の中で解釈通知が示されることになる。(※張り付いた文字リンクは、このブログの新加算についてのカテゴリー記事一覧である。)

そこでの最大の着目点は、この加算の支給を法人単位としてよいのか、事業所単位にとどまるのかという問題である。

仮に後者であれば、特養と通所介護を併設している事業者では、両者の職員給与格差が問題となり、人材流出の元凶となりかねないという問題がある。よって支給については法人単位に落ち着くだろうというのが僕の予想である。なぜなら国も法人内の格差は問題であることを理解しており、そうさせないために対策を行うと考えるからである。

ところで現在まで示されている新加算の算定及び支給要件によって明らかになっていることは、この加算の支給方法は、事業者にある程度裁量権を持たせているため、特定処遇改善加算の算定事業者においては、介護支援専門員も加算による給与改善が行われる可能性があるということだ。しかしその平均改善額とは、経験ある介護福祉士の平均改善額の1/4以下であることが条件であり、仮に経験ある介護福祉士の平均月額改善額が4万円の場合、その事業者における介護支援専門員の月額平均改善額は1万円以下となる。

それほどの格差が存在するとしても、現在より給与が少しでも改善するのであれば良いのだが、事業経営者の考え方一つで、介護支援専門員の給与改善は行わないという判断もありなので、新加算のおこぼれが回ってこない介護支援専門員も多いことだろう。

そもそもこの加算は居宅介護支援事業所では算定できないのだから、居宅介護支援事業所の介護支援専門員にとって、この加算による給与改善はないことが確定している。

今年度の介護支援専門員実務研修受講試験を受けた人の数が、昨年度より一気に6割強も少なくなり37.5%にとどまる中で、合格率が過去最低の10.5%となり、新たに介護支援専門員として業務ができる人の数が全国で3.177人しかいないというのが今現在の状況である。そうであれば現役の介護支援専門員の数が減少する地域が各地で数多く出てくるだろう。そうした中で、新加算により経験ある介護福祉士や、その他の介護職員の給与が上がり、介護職員の平均年収が介護支援専門員より高くなることは確実で、その年収は介護支援専門員より上回る可能性が高い。

それによって近い将来、介護支援専門員のなり手がいなくなるのではなかと懸念する声が挙がっている。しかしそれは一部の介護関係者からの声にとどまっており、国がそのことに問題意識を持っているという現状にはない。

それは「国の隠された思惑とはケアマネの政策的削減(後編)」で指摘したように、介護支援専門員の活動領域を今後狭めていこうという意図を国が持っているからにほかならず、同時に介護職員から介護支援専門員に転身しようとする人の数が減ってもかまわないと考えているからに他ならない。なぜなら介護職員の平均年収が改善されて、介護支援専門員に転身しようとする介護職員が減ること自体は、国の思惑と合致することだからである。なぜなら数が圧倒的に不足しているのは介護職員に他ならないからだ。

介護支援専門員になろうという動機づけを失う介護職員が多くなったとしても、給料の多寡だけで相談援助職を目指す人ばかりであるということはなく、例えば夜勤などのシフト勤務ではない職業を求める人や、相談援助を仕事にしたいと考える介護職員はいなくならないし、そもそも介護職員以外の相談援助の専門職は、実務経験を経たのちに介護支援専門員の資格を得ようとするだろう。

例えば措置制度の時代、特養は公務員準拠の給与とされ、特殊業務手当というものがあり、それは寮母(現在の介護職員)が16%であり、生活指導員(現在の相談員)はその半分の8%でしかなかった。学歴が同じであれば両者の給与はほぼ同じであったため、この手当てにより給与は寮母の方が高く、かつ夜勤を行う分さらにその給与差は広がっていた。

それでも寮母ではなく、相談援助職という専門職になりたいとして大学などで専門にその勉強をする生活指導員のなり手の確保に困ることはなかったわけである。だから介護支援専門員になろうとする介護職員が減るとしても、もともと相談援助職を目指そうとする人が、将来介護支援専門員になることによって、介護支援専門員の必要数は確保できるとみているわけである。

そもそも相談援助職と介護職は、違う専門性を持つ職種であり、介護職の経験を根拠に、介護支援専門員という相談援助職になる道を作ったことは、専門職の確保がままならなかった制度創設時の特定的措置であった。もともと介護職の5年実務によって介護支援専門員実務研修受講試験受験資格を与えるということは、当初案にはなく制度施行直前に滑り込みで決定されたものである。

よってある程度介護支援専門員の数が充足した今日、受験資格資格の既得権をはく奪することは難しくとも、介護職員の確保を優先する待遇改善施策の中で、徐々に介護支援専門員となる職種のターゲットを絞っていこうというのが国の意図としてあることを理解しなければならないだろう。

そもそも介護支援専門員など、その他の職種に加算の恩恵がないからと言って、加算そのものを否定しる考え方はいただけない。この加算によって、経験のある介護福祉士の給与は確実に改善されるのだから、加算以外の収益でその他の職種の給与も改善される可能性が高くなっているとポジティブに考え、さらに新加算の支給範囲や要件を拡充する橋頭保と考えればよいだけの話だ。

それにしてもこの加算を介護支援専門員にも支給すべきだという声を挙げているのが、介護支援専門員の職能団体である、「日本介護支援専門員協会」ではなく、介護業界の労働組合「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)」であったというのが何とも不思議に思えてならない。

日本介護支援専門員協会という団体が、現場のケアマネジャーの声を代表せず、その利益代表ではないということが、このことでも証明されているように思う。

そのような団体に毎月せっせと会費という名の上納金を収めている介護支援専門員の方々は、本当にお気の毒である。その無駄と滑稽さに一日も早く気が付いてほしいものだ。

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Source: masaの介護福祉情報裏板