特定処遇改善加算の最新情報・小規模通所介護の単独経営は困難に。

本日午後2時から第169回社会保障審議会介護給付費分科会が行われる予定になっているが、その資料が既に発出されている。

議題1は、「介護人材の処遇改善について」とされており、新加算(特定処遇改善加算)についての論点が示されている。前回168回の資料と同じものも含まれているが、新たに加わった資料から、今回明らかになった点を抜粋してみたい。

論点1
○新加算の取得要件として、現行の処遇改善加算(Ⅰ)から(Ⅲ)までを取得していることに加え、
・処遇改善加算の職場環境等要件に関し、複数の取組を行っていること
・処遇改善加算に基づく取組について、ホームページへの掲載等を通じた見える化を行っていること とされているが、具体的にどのような取扱いとするか。

対応案
<処遇改善加算の職場環境等要件に関し、複数の取組を行っていること>
○現行の処遇改善加算においては、算定要件の一つとして、職場環境等要件を設けており、職場環境等の改善に関する取組について、「資質の向上」、「労働環境・処遇の改善」、「その他」に区分し、実施した項目について報告を求めることとしている。
○新加算の算定要件としては、「資質の向上」、「労働環境・処遇の改善」、「その他」それぞれの区分で、1つ以上の取組を行うこと等、実効性のある要件となるよう検討してはどうか。

対応案
処遇改善加算に基づく取組について、ホームページへの掲載等を通じた見える化を行っていること
○利用者が、適切に事業所等を比較・検討できるよう、都道府県等が情報提供する仕組みとして情報公表制度が設けられており、介護事業者は、年1回、直近の介護サービスの情報を都道府県に報告し、都道府県等は報告された内容についてインターネットに公表している。
○公表する情報には、「提供サービスの内容」や「従業者に関する情報」として、「介護職員処遇改善加算の取得状況」や「従業者の教育訓練のための制度、研修その他の従業者の資質向上に向けた取組の実施状況」も含まれている。
○新加算の要件として
・「提供サービスの内容」において、新加算の取得状況を報告すること
・「従業者に関する情報」において、賃金改善以外の処遇改善に関する具体的な取組内容の報告を求めることを検討してはどうか。
あわせて、
・情報公表制度においては、介護職員処遇改善加算に関する具体的な説明がないことから、処遇改善に取 組む事業所であることを明確化すること等を検討してはどうか。

論点1は以上のように示されている。今後の介護事業経営を考えたとき、職場環境等の改善については「人材確保」という観点からも必要不可欠であるのだから、その整備と報告が必要なことは、さして高いハードルとは言えないだろう。これをきっかけに今以上に人材となり得る人が働きたいと思える環境整備に努めればよいだけの話だ。「見える化」については、誰も見ていない情報公表制度のインターネットでの公表情報を活用することにしているのは滑稽であるが、これが役人の発想であり、アリバイ作りさえしておればよい人達の限界なんだろう。業務の手間としては送らねばならない情報が多少増えるからと言って、これもさしたるハードルではないだろう。両者全く問題なくクリアできると思う。

論点2
○経験・技能のある介護職員において「月額8万円」の改善又は「役職者を除く全産業平均水準(年収440万円)」 を設定・確保することとし、「小規模な事業所で開設したばかりである等、設定することが困難な場合は合理的な説明を求める」としているが、「設定することが困難な場合」の考え方を明確化してはどうか。

対応案
「小規模な事業所で開設したばかりである等、設定することが困難な場合は合理的な説明を求める」としてい るが、どのような場合がこの例外事由にあたるかについては、個々の実態を踏まえ個別に判断する必要があるが、
・小規模事業所等で加算額全体が少額である場合
・職員全体の賃金水準が低い事業所などで、直ちに一人の賃金を引き上げることが困難な場合
・8万円等の賃金改善を行うに当たり、これまで以上に事業所内の階層・役職やそのための能力・処遇を明確化することが必要になるため、規程の整備や研修・実務経験の蓄積などに一定期間を要する場合を基本とし判断することとする等、考え方の明確化を図ることを検討してはどうか。

あけてびっくりの新処遇改善加算」で指摘したように、小規模の通所介護では、全体の加算額が月額12.000円程度にしかならず、8万年の改善など夢のまた夢でしかないという問題があった。その場合に月額8万円給与改善される人、もしくは改善後に年収が440万円以上となる人が一人以上いなければならないという算定要件があるが、これに該当しなくてよい例外規定が論点2で示されたものだ。

しかし加算額が少額である場合は、給与改善額もその範囲に収めることができるという規定の意味は、「そういう事業者の介護福祉士は泣いて我慢しなさい」という意味でもある。これはそのうした職員がお気の毒であるといって終わらない問題ではないか。つまり今後、小規模通所介護事業を単独運営している事業者からは、介護福祉士がいなくなると言えるのではないか。そのような事業所に長年勤めても、わずかな給与アップしかされないとしたら、それより大幅に給与改善が期待できる大きな法人への人材流出が始まり、小規模事業所の単独経営は不可能になっていくのではないかと危惧する。

それにしても「職員全体の賃金水準が低い事業所などで、直ちに一人の賃金を引き上げることが困難な場合 」まで例外規定として認めるとなると、賃金改善の努力を放棄してこの規定に甘んじる経営者が出てきそうで心配である。まあそういう事業者からは人材がいなくなって、経営ができなくなるので、そういう方向で国は、事業所淘汰を図っていると考えたほうが良いのかもしれない。

論点3
○「経験・技能のある介護職員」については、「勤続10年以上の介護福祉士を基本とし、介護福祉士の資格を有することを要件としつつ、勤続10年の考え方については、事業所の裁量で設定できることとする。」としているが、事業所の裁量についてどのように考えるか。

対応案
○経験・技能のある介護職員を設定するに当たり、「勤続10年以上の介護福祉士を基本」とするものの、「勤続10 年の考え方」については、
・勤続年数を計算するに当たり、同一法人のみの経験でなく、他法人や医療機関等での経験等も通算できること
・10年以上の勤続年数を有しない者であっても、業務や技能等を勘案し対象とできること等、事業所の裁量を認めることを検討してはどうか。

これには少し驚いた。業界10年の経験について、介護業界のみならず医療業界の経験も認めてよいことになっている。これは介護福祉士にとっては歓迎すべきことだろう。

さらに驚くのは、「経験10年」に満たない場合も、「業務や技能等を勘案し対象とできる」としている点である。これはあくまで事業所裁量で、「認めなければならない」という規定ではないことから、事業所間で判断に格差が生ずる部分であるが、場合によってはこの技能等を広く認めて、経験が浅くとも経験者と同様の給与改善をしてくれる事業者があるやもしれない。

逆に言えば、事業経営者はには、さらに難しい判断が迫られていくことになる。今後の事業経営に支障を来さないように、人材が集まり定着するために、この特定処遇改善加算の支給方法をどのように定めるかが、事業経営者の現在の最大の悩みであることは間違いのないところだ。

論点4
○事業所内における配分に当たり、法人単位での対応を可能とする等の配慮を求める意見があるが、どのように考えるか。

対応案
○現行の処遇改善加算においても、法人が複数の介護サービス事業所を有する場合等の特例として、一括した申請を認めることとしており、新加算においても同様に法人単位での対応を認めることを検討してはどうか。

月曜日に書いた、「特定処遇改善加算によってケアマネがいなくなる?」でも書いたが、法人内での格差・差別間を生まないためにも、支給については法人単位が認められて当然であり、その方向がはっきりと示されたことは、10月の支給に向けて準備を進める法人にとっては朗報だろう。まあこれは予想の範囲内といったところだろうか。

以上の点が新たに示され、この方向で介護給付費分科会は進行する。資料以上の結論が出ることはないだろうが、その結果は明日の関連サイトに朝一で掲載されるだろう。注目していただきたい。

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Source: masaの介護福祉情報裏板