特定処遇改善加算の配分をどうするかについて・masaの私見として

昨日の介護給付費分科会資料で、特定処遇改善加算の支給・配分要件がほぼ明らかになった。解釈通知は全国課長会議のある19日に発出されることになると思うが、昨日審議された資料内容がほぼそのまま反映されるだろう。

ということで介護事業経営者は、いよいよこの加算の算定や配分の方針決定をしていかねばならない。10月まで間があると言っても、職場内の人間関係を壊さないように、丁寧に説明を行いコンセンサスを得るためには、方針をできるだけ早く明確にしておく必要があるからだ。

そこで今日は、この加算をどう配分するか考えてみたい。しかしそれはあくまで僕の私見の域を出ず、誰かにその方法を推奨したり、こうしたほうが良いとアドバイスするようなものではない。自分が介護経営者であるとすればこうするという考え方述べるに過ぎないことを了承願いたい。

昨日書いた「特定処遇改善加算の最新情報・小規模通所介護の単独経営は困難に。」で示したように、この加算の配分方法について新たに示された内容のうち、重要な点は次の3点である。

1.勤続年数を計算するに当たり、同一法人のみの経験でなく、他法人や医療機関等での経験等も通算できること
2.10年以上の勤続年数を有しない者であっても、業務や技能等を勘案し対象とできること等、事業所の裁量を認める
3.新加算の配分に当たっては、法人単位での対応を可能とする

まず新加算を算定するか否かという判断だが、算定しない事業者からは中・長期的には人がいなくなるとみて間違いない。多角経営している事業規模が大きな法人の経験ある介護福祉士だけを見ると、この加算で改善できる額はかなり大きな額になり得るからだ。そのために算定単位は新加算Ⅰの高い単位取得を目指す必要がある。

これを踏まえたうえで配分を考えると、まず問題になるのが配分する単位を事業種類ごととするか、法人全体(会社単位)とするかという問題である。多角経営している規模の大きい法人は、通所介護などの加算率の低い事業の職員にも配分できる原資が大きくなることは有利性であると考えて間違いないので、規模の大きな法人はこの有利性を生かす配分方法を考えるべきで、法人単位で支給する方法を選ぶべきだろう。そうすることによって単独事業者で給与改善ができないか、額が低い事業所の職員の引き抜きをも視野に入れることができるからだ。

そのうえで配分については、他法人および医療機関等の経験も通算して10年以上の介護福祉士に絞って支給するという方法を選択したい。そうすることによって、現在他法人や医療機関で働いている職員が募集に応募してくれる可能性が高まるからだ。

この方法をとると、その他の介護職員については配分されなくなるが、その他の介護職員には、介護福祉士を取得したうえで、通算経験が10年になれば給与が大幅アップするということをモチベーションにしてもらい、それを目指してもらいたい。例えば今給料が上がらない介護職員が、別の事業所の自分と同じ経験の職員が給与アップしてうらやましいと思うのは当然だが、経験が10年になれば、今比較した他事業所の職員より給与は高くなることが確実で、その差はずっと続く可能性が高いのである。このようにして年数さえ経れば、自分の給与もアップされるのだから、それを目指すことによって定着率のアップにつながる可能性もある。

しかもこの方法をとることによって、経験ある介護福祉士については、新加算により考えられる最も高い給与アップがされるし、他事業所より給与改善額が低くなることはないので、やめにくくなる。それにより組織全体の介護職員の定着率が高まるだろう。

今回の資料で示された、「10年以上の勤続年数を有しない者であっても、業務や技能等を勘案」という方法は採用すべきではない。その評価は難しいし、それを行うと評価されない職員の不満が高まるデメリットの方が大きくなるからだ。尺度のわかりやすい「経験10年の介護福祉士」だけを配分対象とするのがベターではないかと思う。

そうすると看護職員や介護支援専門員をはじめとした相談援助職に配分はしなくてよいのかという議論になると思うが、この加算による配分からは、それらの職種は除外するしかないと思う。

他の職種まで配分を広げると、経験ある介護福祉士へ支給額が減ってしまうし、多職種へ配分するとしても、所詮その額は経験ある介護福祉士の平均改善額の4分の1以下でしかないのだから、全体でみる改善効果が極めて薄まることになる。それは兵力の逐次投入に似た愚策であると考える。

それに不満を持って他職種が他の職場へ流出する恐れがあると言っても、他の職場でいかほどの給与改善ができるかを考えれば答えは自ずと出てくる。しかも他職種が給与改善された職場の、経験ある介護福祉士の改善額は必然的に低くなることを考えれば、逆にそうした職場から経験ある介護福祉士が流入してくることを期待したほうが良い。募集に応募が少なく不足している職種は何かを考えたときに、どちらが優先されるかは一目瞭然だろう。

だからと言って他職種の給与はどうでもよいということではない。新加算は、経験ある介護福祉士に最大限手渡したうえで、同じ経験のある他職種は、事業収益を挙げる努力をしたうえで、その中で定期昇給額のアップや、成果報酬の改善に努め、そちらで最大限の手当てを考えるべきではないだろうか。

それと表の掲示板の、僕が立てたスレッドに「小規模デイでもやっていけるよ ( No.1 )」というレスポンスがつけられており、小規模デイで環境を整えているので職員は満足しているから、新加算を算定しなくても職員は辞めないし、これからも事業経営に問題はないとしている小規模通所介護の経営者がおられる。

それはそれでよいだろう。そういう経営をできていることは称賛されてよい思うし、今後も頑張ってほしい。しかし「処遇改善加算Ⅰを取得していますが、今回の特定処遇改善加算は取るつもりはありません。必要もないと思っています。」という意見に関して言えば、いかがかと思う。

今はとても良い環境で職員も不満はないのだろう。既存の処遇改善加算Ⅰを取得しているのだから、他の事業者との差も大きくはないと思う。しかしそれに甘えてよいのだろうか。職員の満足感に甘えて、さらなる給与改善をしなくてよいのだろうか。そうした環境の良い事業所であるからこそ、今回の新加算Ⅰも算定して、少しでも職員の給与アップを図るのが経営者の責任と義務と言えるのではないだろうか。

ただしこういう考え方の経営者がいる地域の、他法人はチャンスである。特に規模が大きく多角経営しているが、デイサービスの質がイマイチで単独経営の事業者に負けていると嘆いている介護経営者の方は、この新加算をきっかけに、事業所の血を入れ替えるチャンスである。

単独経営事業主が、良いサービスを実現して職員も満足して働いているから、特定処遇改善加算など算定せず、それに頼らないで事業継続していくと考えているのなら、そうした事業所で働いているリーダー的な職員をヘッドハンティングするチャンスなのだ。

今より月額5万円高い給料を支払うので、私の事業所の職員を教育して、今のあなたの事業所のようにしてくださいとヘッドハンティングできる可能性が出てくるからだ。その機会も逃してはならない。

前にも書いたが、この加算を経験ある介護福祉士に全額支給する事業者では、他の職員の不満が高まるだろうし、配分の幅を広げる事業者においては、改善額が低くなる経験ある介護福祉士の不満が高まるだろう。どちらが良いとか、どちらが有利だとか判断できる何ものもないのが現状で、答えのない判断が事業経営者に迫られてくるわけである。

そんな中で、今回僕の考え方を示したわけであるが、それがベストかどうかは判断できないし、それは地域事情によっても結果に違いが出るだろう。

しかしどういう方法をとるとしてもこの加算が、事業者や事業経営者の収益とは全く関係なく、あくまで職員の給与等の待遇改善の目的として全額が使われるということを丁寧に説明したうえで、最終決定に導いていくことが大事だろう。

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Source: masaの介護福祉情報裏板