人材確保は多方面・多角的視野で

4月から創設される外国人労働者の新たな在留資格、「特定技能」が発効することに関連して、介護事業者でもその技能に基づく外国人労働者を受け入れを促進するために、全国各地でその説明会が開催されている。

特定技能」を持つ外国人が日本の介護事業者で働ける期間は5年で、基本的にはその間に家族の帯同は認められない。しかし介護福祉士の資格を取れば永住への道が開け、配偶者や子を呼ぶこともできるようになる。しかしそれらの人が働く場は特養、老健、特定施設、グループホーム、通所介護などを対象とし、訪問系のサービスは除外されている。そのため一部の介護事業関係者からは、早急なる訪問サービスへの解禁を望む声もある。

こうした外国人人材について、政府は向こう5年間の受け入れ人数を最大6万人と見込んでいる。それに対して人材・人員不足に危機感を持つ日本の介護事業者の期待も大きい。

短期的にみれば、外国人人材を受け入れて人手を確保できる事業者も増えていくことは間違いないが、長期的にみて、このことが介護人材確保の決め手となるとは思えない。外国人の中にも優秀な人がいることを否定しないが、彼らは日本の福祉や介護に貢献しようとして来日するわけではないし、日本の介護労働力不足の解消を目的に来日するわけではないからある。

外国からくる方々は、人格がどうのこうのという問題は別にして、ある意味シビアに出稼ぎに来るのだという理解が、受け入れ側の介護事業者に求められる。例えばベトナムなどは平均年収が日本円で40万円程度であるという事情があり、その中で出稼ぎに来るのだから、数年間日本で働いて、母国では資産ということができる一定の金額を稼いだ後は、早々に母国に帰りたいと思うのは当たり前のことである。よって日本の介護事業経験を踏んでスキルがアップしても、そのまま介護事業者の戦力としてとどまろうとする人は少ないのも当然の結果となる。

そうした事情の中で働くのだから、就業事業者が環境を整え、受け入れる事業者と外国人労働者が良い関係性を結んだとしても、そこことによって職場に外国人が定着するなどという幻想を抱いてはならない。もっと高い給与を支払う事業者に、ある日急に転職してしまう外国人は多いし、それを斡旋するブローカーも今後増えてくるからだ。

よって外国人労働者を戦力とみては、大きな失敗につながる恐れがある。それらの人々は、あくまで補完勢力程度の期待値を持つにとどめたほうが良い。結果がそれ以上になればしめたものである。その程度の期待値にとどめないと、事業戦略上の大きな失敗要因になりかねないだろう。

そもそも外国人労働者の雇用にはコストがかかることを理解しておかねばならない。住み場所の確保のほか、日本語教育等に係る教育費用など、定額支出が人件費に上乗せしてかかるのだ。本来それは介護給付費には含まれない費用だから、法人の持ち出しになる費用とも言える。それを支払う体力が求められるので、外国人労働者の確保の費用負担に耐えられる事業経営戦略の練り直しも求められる。そのことも決して忘れてはならない。

そんな中で介護ロボット等の開発も急がれる。人海戦術に頼り切る介護ではなく、人に替わってロボットができる部分は、そちらにシフトさせようという動きは当然あるだろうし、その必要性はますます増している。しかしAIを搭載したロボットで、現在人に替わって仕事ができる介護ロボットは存在していない。力のいる動作と巧緻性が最も求められる動作を、無意識に自然につなげられる人間に替わって、それらの動作をつなげて行うことができる介護ロボットが将来誕生するという保障もない。それは著しく困難だろうとしか思えない。

だからこそ、人に替わってロボットがすべての介護業務を行うなどという未来図を描く前に、人の動作の一部を支援できる介護ロボットで、介護業務の省力化を図っていくことから始めることが、まずは大事なのだろうと思う。

しかし介護支援ロボットは、導入さえすればすぐ使えるということにはならない。それを使いこなすには知識と技術が必要である。

例えば移乗介助を複数人数によって行う必要がなくなる、「ノーリフティングケア」について考えてみればわかることであるが、それは優れた方法論であることは間違いないが、その実施にはスライディングボードや、移乗支援機器などを使いこなす知識と技術が必要とされる。・・・ということは介護ロボットを使いこなすために、新たな人材育成プログラムが必要となるという意味で、それって人材対策になっているのかという疑問が生ずる。介護支援ロボットを使いこなす人材がいないと、省力化にならないとすれば、そのための人材の確保にさらに苦しむことになりかねないからだ。

そうであれば、介護の現場にロボットを導入するという発想ではなく、社会全体を見まわして、ロボットに替わることができる仕事をもっとあぶり出し、そういう仕事を人間がしなくて済むようにすることによって、社会全体で人材を確保し、その一部が介護労働力になっていく方が、現実的な政策と言えるのではないだろうか。

例えばコンビニエンスストアのレジ打ちや、ファーストフード店の顧客対応のアルバイトが枯渇し、時給が上昇していることが原因で、そこに登録ヘルパーなどが転職し、近い将来、登録ホームヘルパーはいなくなると懸念されている。

そうであればレジ打ちはAIロボットで可能なのだから、定員のいないスーパーやコンビニエンスストアが常態化すれば、ヘルパー確保は今より容易になるのではないか。

かつて日本のガソリンスタンドは、店員がガソリンを入れてくれるのが当たり前であったが、今ではセルフ給油が当たり前になっており、店員がいないスタンドも増えてる。それと同じような仕事をもっと増やしていくことで、人手が欠かせない介護などの仕事に労働力が流れてくるのではないかということも視野に入れなければ、介護労働力不足は決して解決しないだろう。

人材マネジメントセミナーに参加すると、国は本腰を入れて対策すれば、国全体・地域全体で人材が確保できるかのような、明るい見込みを口にする講師も多い。しかしそれは幻想だ。日本の人口構造を観れば、生産年齢人口の減少は確実だし、その数は今後の高齢者の数の減少を上回るスピードで減少していくのも確実である。

そのため我が国で生まれ育つ人間だけでは、この不足は解消できないのだから、外国人にも広く労働市場を開放するのは、やむを得ない政策ともいえるが、それが必ずしも有効に機能しないことは前述したとおりである。

だから介護事業経営者や管理部門の担当者には、生き残るために差別化して、他の事業所に人材確保面で火っていくという戦略が求められる。近隣の介護事業所すべてが、人材確保面でウインウインになるような政策も方策も存在しないのである。自分が経営する事業が継続できるために、同人材確保してくのかを、独自の視点で獲得する必要がある。

それは待遇面の強化もさることながら、それだけでは他の優る戦略とはならない。人材が貼りつき定着する介護事業とは、人材教育を基盤にして、根拠に基づいた高品質なサービスが必要絶対条件になってくることを理解し、覚悟を持ってそうした事業を作り上げていく必要がある。

求められる人材が、どのような事業者から逃げていくのか、その理由は何か・・・。求められ、誰もが欲しいと思える人材が、どういう事業者に定着していくのかをよく考えてみる必要がある。

そういうことを含めた人材マネジメントセミナーも、僕の得意とするところでもあるので、そうしたテーマの講演講師を探している方は、ぜひ気軽に声をかけていただきたい。

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Source: masaの介護福祉情報裏板