誰もが介護の仕事に合うわけではありません
今日は新年度が始まって最初の土曜日である。
1日の月曜日に入職した新人にとっては、この週は仕事を覚えようと必死に一日一日を過ごした1週間であったろう。どうかその疲れをとるために、この土日はゆっくりと休養に努めてもらいたい。先は長いのだから、ゆっくり確実に仕事を覚えてくれればよい。
志をもって介護の仕事に就いた人にとって、介護という仕事をまじめに覚えていく先には、きっと仕事の結果を出すことができ、志を遂げることができるだろう。そして介護という仕事は、誇りを抱ける職業だということが実感できるだろう。ただしそのためには自らを高める努力とともに、職場もきちんと評価して選ぶという考え方が必要だ。
対人援助という仕事は、そこで関わる人々を敬い幸せにするために存在する仕事だ。その目的を達しようとしない職場は、本来志を高く抱く人々がいるべき場所ではない。利用者を顧客としてみることなく、サービスマナーのかけらもなく、プロ意識の欠如した素人と見まごうサービス提供しかできない職場では、本当の意味で対人援助の目的は達することはできない。
そういう場所に長くいると、自らの意思とは関係なく意識も低きに流されてしまう危険性がある。だから早い段階で、そういう職場を「見切る」という視点も求められる時代である。
そうすることで、そういう職場に従業者が集まらずに、事業継続ができなくなることは、将来的にはこの国の福祉の向上につながるのである。
そんなことをしていたら事業者がなくなって、サービス提供を受けられない人が大量に生まれるのではないかと心配する向きもあるが、介護事業経営者がこの業界で食っていこうとするならば、必然的に従業員や利用者が集まる方向への、「サービス競争」が始まるのが市場原理である。そのためにも駄目な介護事業者から人材がいなくなる形をできるだけ早く創りあげないとならない。
介護に向かない経営者や、人の尊厳を傷つけても何とも思わない従業員による劣悪サービスを含めて、玉石混合でもってサービスの量を担保するなんてことは、人の命や暮らに係る職業には本来あってはならないのだ。本来あってはならないことが、今存在しているという恐ろしさに気が付くべきだ。
例えば介護事業者に入職した新人の中には、まだ十分仕事も覚えていないのに、いきなりシフト勤務に組み込まれて、この土日も休みではないという人がいるかもしれない。しかし基礎研修やOJTも十分ではない状態で、就業1週間目からシフト勤務に組み込むような職場は、サービスの質に関心がないと言ってよい。利用者に最低限のことさえ行えばよしとするような事業者には将来性がないと判断しても良い。そんなところには「見切り」つけて、できるだけ早い段階で職場を変える判断をしても良いのだ。そんな場所で頑張り続けても、介護スキルなど高まらないからだ。
多くの職場で、新規雇用者に対して「試用期間」が設けられているように(試用期間は労働基準法上は規定がなくても良いとされ、法人の任意事項である)、従業員の側も職場に対して、「試用期間」という視点を持つべきである。
就業前にいくら良い餌を吊り下げていても、それが全くのまやかしで、従業員や顧客を食い物にするブラックな事業者は、従業員の側から見捨てたって良いのである。それだけ介護事業者とは玉石入り混じった様々な職場があるという実態があるのだ。より良い人材は、より良い職場を選ぶ権利と機会があるのだということを知るべきだ。
同時に「自分に対する見切り」という視点も大事だ。
自分自身が本当に介護の仕事に向くのかも考えてほしい。人間性がどうのこうのという問題ではなく、人にはそれぞれ特性があって、その特性の中には職業と合う・合わないという特性も含まれるのだ。介護の仕事と合わないことが、イコール社会人としての資質がないとか、品性が低いとかいう問題ではないのだから、基礎研修やOJTを通じて、介護という職業が自分に合わないと気づいた人は、一日も早くこの業界から去って、別の仕事を探すべきだ。
自分に合わない仕事を嫌々ながら続けていくことで、その仕事が性に合ってくるなんてことに期待しないほうが良い。介護とはそんな簡単な仕事ではないのだ。この仕事を続けて、人の暮らし向きを少しでも良くすることが自分の喜びであり、自分のモチベーションだと思えない人は、誰かの極めてプライベートな領域に足を踏み入れることがあってはならないのだ。
いやいや仕事をやり続けて、半年後に辞めてしまうのであれば、いっそ今のうちにやめてくれた方が良い。そんな人をこれから先、半年間も教える職員にとって、そのゴールが教えた職員の退職であれば、教育訓練に費やした時間がすべて無駄になってしまう。そんな無駄な時間は、できるだけ短い方が良いわけである。
だからこの時期、自分に見切りをつけて辞めようとする人を引き留めてはならない。
1日に入職して、急に体調不良を理由に休みを取った新人の中には、既に退職届を出した人もいる。今では自分で退職の申し出や、手続きができない人に替わって、それを行ってくれる、「退職代行」という職業があるのだから、その傾向は強まっていると言えるのかもしれない。自分で退職を申し出ることができない理由が、その人自身にあるのか、雇用側にあるのかは微妙な問題であるが、どちらにしても、ここしばらくは企業側・雇用者双方の取捨選択があって当然の時期だと割り切った方が良い。
良い人材や、良い職場を求める時期というのは、この時期だけとは限らないのだから、良い介護事業者を目指そうとする人、良い介護事業所に所属したいと求める人双方が、見極めを行いながら、求める方向を目指していけばよい。
そのような形で、人材確保の勝ち負けがついていくのが、現在の介護業界の雇用事情である。
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Source: masaの介護福祉情報裏板