改元を給付制限に都合よく利用しようとしている人たち

平成から令和へと元号が変わることが、様々な場所で利用されている。国の審議会もしかりである。

4/4に財務省の財政制度等審議会の総会が開かれているが、その中で同会会長は、「財政を悪化させてしまった平成30年間の過ちを繰り返してはいけない。新しい令和の時代に相応しい財政運営が実現するよう、私が先頭に立って取り組む」と決意表明している。こんなところでも元号変更が利用されている。

そして給付抑制を徹底的に進めるために、「歳出改革部会」を新たに設置し、社会保障費の抑制などを集中的に論じることを決定している。改元という時期を利用して、締め付けをさらに厳しくするぞという決意表明である。

それというのも2021年度には制度改正・報酬改定が予定されているためである。国はこの夏の参議院選挙が終わってからそのための本格的議論を始め、その中身を年末までに固めるレールを敷いている。

そのなかで財務省は、次の改正で利用者負担割合を原則2割に引き上げることをもくろんでいる。そもそも現行の負担率1割(原則)・2割(一定以上所得者)・3割(現役並み所得者)の3段階がいつまでも続くはずがなく、負担割合については2割を経て3割までもっていこうというのが財務省の思惑ではある。2割負担を原則とするのは3割負担実現のソフトランディングに過ぎないが、その実現のための1割負担廃止を2021年にも実行しようと手綱を引き絞っているという訳である。

そのほか既に居宅介護支援費の利用者負担導入もほぼ既定路線化されている。

施設サービスにおける多床室の室料負担は、現在特養だけが利用者負担とされているが、この範囲を老健・介護医療院・療養型医療施設にも広げることもほぼ決定事項だ。

軽度者への生活援助サービスについて給付のあり方を検討する方向性も財政審はかねてより示唆している。すでに予防給付の訪問介護は地域支援事業へ編入されているが、要介護1と2の利用者に対する生活援助も同じように新総合事業化が検討されるという意味だ。

その延長線上には、福祉用具貸与と通所介護の要介護1と2の利用者のサービスも、介護給付から外して新総合事業化する議論が含まれてくるだろう。

医療系サービスも例外ではない。訪問・通所リハビリや訪問看護等も予防給付が永遠に続くなんてあり得ないと考えたほうが良い。

このように下々の者たちの痛みと我慢だけで、この国の問題を解決しようとしているわけである。そんなことが許されてよいのだろうか。

それに対して何も抵抗できない各種審議会の委員も総入れ替えが必要だと意見すれば、「いや介護給付費分科会は、国から決められたことを下ろされるだけだから、そこで何かを決められないんだから委員の責任ではない」という人がいる。本当にそうであれば、そんな審議会や委員会にお金をかける無駄こそを省いてほしいと思う。

どちらにしても今年10月の消費税対応で介護給付費が引き上げられた場合には、財政事情が厳しい中で2年連続して介護給付費は引き上げたという政府実績になるのだから、次の2021年改定では、3回連続給付費用を引き上げるのは、財政事情から考えて優遇しすぎであるとされ、必ずマイナス改定とする方向で、「歳出改革部会」は様々な指摘をしてくるだろう。

厚労省はそれに対して抵抗・反論ができるだろうか。

しかし平成時代に積み起こした最大のものは、「社会保障改革」ではなかったはずだ。社会保障と税の一体改革という「国民の痛みを伴う改革」の前提は、政治家も痛みを負う「政治改革」があってこそのものではなかったのか。

しかるに政治改革は全く行われず、定数の削減という議員の痛みには全く踏み込まず、逆に国会議員の定数は増やすという。

つまり平成の時代に積み残した課題の最大のものとは、「政治改革」ではなかったのか。いやしえ時改革を行うという虚言でもって、国民の痛みだけが強いられたのが「平成の改革の実態」であったと言い切ってよいだろう。その付けを返せと言いたい。

国の借金を減らして財政を健全化する取り組みが必要なことはわかっている。そのために収入を増やすだけではなく、支出も減らすために、不必要な経費はできるだけ削っていくという方針も理解できる。しかし減らしてよい経費とは、国民の暮らしを護るための経費ではなく、痛みを伴う改革を全く行っていない政治家に欠ける経費ではないのか。少なくとも改革の優先度は、国民に痛みを強い前に、国会議員をはじめとした政治家の痛みを伴う事柄が先に来るべきだろう。

国家公務員の待遇の見直しも必要だ。高級官僚とかキャリアとか呼ばれる人々の待遇は、国民の痛みに比して高すぎるのではないかという議論もあってよい。

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Source: masaの介護福祉情報裏板