管理者要件厳格化の経過措置延長を要望した協会の今更

4/10に行われた社保審・介護給付費分科会で、日本介護支援専門員協会の小原秀和副会長が、居宅介護支援事業所の管理者を主任介護支援専門員とする運営基準の厳格化の経過措置(2021年3月まで)を延長するように要望した。

延長が必要な理由について小原副会長は、「(主任ケアマネになるには5年以上の実務経験と70時間の研修が必要になってるため)厳格化が決まる前から事業を行っている事業所の中には、努力しても実務経験の課題を解決できないところがある」と述べたそうであるが、管理者要件の厳格化そのものには反対していない。そりゃそうだろう。すでにそのことには賛成するっていう趣旨の意見書を国に提出しているご当人が小原副会長だから、今更その意見を覆すことはあり得ない。

しかし一方で日本介護支援専門員協会は、都道府県支部長宛てに、「介護保険制度改正及び介護報酬改定に関する調査への周知協力について(お願い) 」という文書を3/18付で送っている。その中で居宅介護支援事業所の管理者要件厳格化について賛成か反対かという意見を求めているのである。そのアンケート結果も出ていない時点で、経過措置の延長だけを求めているということは、アンケートがアリバイ作りの形式的なものでしかなく、いかにこの協会が現場の声を軽視しているかということの証明でもある。(参照:日本介護支援専門員協会の遅すぎるアリバイ作り

もともと僕は居宅介護支援事業所の管理者を主任ケアマネにする問題については、約4万件ある居宅介護支援事業所のうち半数以上の管理者が主任ケアマネ資格なしという状況を考えると、昨年4月からの経過措置期間の3年で、全事業所の管理者が主任ケアマネの資格取得をすることは困難と言い続けてきた。そして経過措置の延長はあり得ることだと様々な講演会場で言ってきたことだ。

今回の小原副会長の要望は、その問題には沿うものであったとしても、この管理者要件の変更問題の本質はそのようなところにはない。

主任ケアマネの資格を持っているからと言って、そのことが管理者に必要な見識や知識につながるかというのが最大の問題なのである。(参照:この問題に関する一連記事

小原副会長は、現場のケアアンネの声を聴こうともせず、管理者を主任ケアマネに限定することに独善的に賛成した理由について、2018年2月に次のように述べている。

「まずは5年間の実務経験が不可欠になります。管理者としての責務を十分に果たすには、やはり一定の経験値を積んでいることが必要になると考えます。主任ケアマネの研修を修了していることも重要です。個別事例の検討やスーパービジョンなどは非常に大事ですし、後輩の育成や業務管理、リスクマネジメントに関するカリキュラムも含まれています。これらを学んでいる人とそうでない人のどちらが相応しいか? それはやはり前者ですよね。厚労省の調査でも裏付けられました。主任ケアマネが管理者を担っている事業所の方が、他のケアマネが相談できる時間を設けていたりOJTを行っていたりする割合が高いと報告されています。」(インタビューに対する小原副会長の言葉をそのまま抜粋引用)

このコメントを読んでわかるように、2018年2月時点で主任ケアマネになるためには介護支援専門員として5年の実務経験が必要だということを十分認識したうえで、経過措置は3年間しかないことも承知して、管理者要件厳格化に賛成しているのである。そうであるにもかかわらず今更のように経過措置延長を求めているのは、管理者要件厳格化に賛成したことへの批判の声が高いことから、そのことを少しでもかわそうとする姑息な手段でしかない。

小原副会長が唱える管理者要件厳格化賛成の理由は、主任ケアマネになるために研修を受けているから、受けていない人よりましだという理由でしかない。・・・寝ていても受講したものと認められ、試験もなく取得できる資格を得ているからと言って、そんなことで研修を受けていないケアマネとの差別化が図れると言い切ってよいのか?主任ケアマネの受講機会に「当たった」ケアマネが、研修を受ける暇もないほど多くの利用者を抱えて走り回っている介護支援専門員より知識や援助技術が豊富になると言い切れるのだろうか。現場で汗水たらして利用者支援に努めている人よりましになることがあるのだろうか。

しかもスキルが高くなるという根拠を不正統計で名高い厚労省の調査データに求めている。あんな調査結果は、データの拾い方、数字の読み込み方でどのようにでも解釈できる。そんなものに何の信頼も置けないことは、少し知識のあるものなら常識というレベルの話だ。

そもそも、「相談できる時間を設けていたりOJTを行っていたりする割合が高い」といっても、問題となるのはその中身だろう。スーパービジョンのスキルかない人が、いくら相談時間をとっていても時間の無駄である。OJTと称して実際に何をしているかが問われてくる問題で、厚労省のあの調査結果でそんな実態は見えてこない。

こうした根本的な問題に触れず、支部会員に対するおざなりなアンケートを行うだけで、その意見も拾おうともしていない。そして給付費分科会という場で、会員の声とは無縁のパフォーマンスに終始する姿を、お金を払っている会員たちはどう見ているのだろうか。

日本介護支援専門員協会の本音とは、主任ケアマネジャーになるための研修と更新研修を受ける人が増えることで生ずる「利権」を得ることに他ならない。黒い陰謀の中にこの動きがあるということだ。

こんなことを許していることは、僕にはとても理解ができない。本当に不思議な組織である。

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Source: masaの介護福祉情報裏板