若い介護職員が凛々しく見えたとき

僕が全国各地で行う講演テーマの中で、「介護事業におけるサービスマナー研修」があるが、そのテーマで講演を行なってほしいという団体・組織が年々増えている。また法人単位の職員研修として、「サービスマナー研修を行ってほしい」という依頼も増えている。

社会福祉法人や医療法人等が職員に対するサービスマナー教育の必要性を感じる理由は様々である。

適切なサービス提供を行っている事業者においても、多様化する顧客ニーズにマッチしながら、将来にわたって安定的に顧客に選んでもらえる事業者を目指して、職員のホスピタリティ意識をさらに向上させるために、そして少しのほころびも出さないようにするために、サービスマナーを強く意識した教育訓練に取り組むところもある。

経営者や管理者が現状を認めなおしたときに、経営理念や抱いている理想とあまりにも現実が異なることに愕然として、対人援助とは何ぞやということを認めなおす過程で、マナー教育の必要性に気が付くこともある。

場合によっては一部の職員の虐待が明るみになって、行政指導を受けるなどをしたことがきかっけで、出直しのための職員の再教育という意味で、サービスマナーの改革に努めようとしているところもある。

サービスマナー改革に本気で取り組む事業者は、確実に成果を出す前に産みの苦しみを経験せざるを得ない。経営者や現場リーダーがいくらマナーを改善しようとしても、タメ口で利用者に接することが、利用者が親しみを感じてくれる唯一の方法論だと勘違いしている輩は、口を酸っぱく注意したところで、そうした注意が念仏化して、聞き流しているだけになる。従前までの自分のやり方を変えようとしない頑迷な職員も必ず出てくる。

口を酸っぱくして注意しても変わらない職員、頑なに今までのやり方にこだわる職員は、「また同じことを言っている」・「注意を受けたときだけ神妙な顔をして聞き流しておけば、何も問題ない」と考え、何も変えようとしない職員であり、それは職場に「」をなす、「人罪:じんざい」であると言っても過言ではない。

そうした職員は、労務管理ができない人なのだから、人員整理の対象とせねばならない。労働契約を勝手に解除することは無理でも、コミュニケーション能力が、職場の求める能力に足りないのだから、少なくとも介護の現場からは外す必要がある。そして職場の定めたルールを護ることができないのであれば、この職場には向かないということを説明し、労使双方が納得・合意した形で、自主的に退職してもらうべきである。

僕は自分がトップを務めていた職場でも、今経営アドバイスを行っている場でも、この姿勢を揺るがせず貫いている。この点で少しでも妥協してしまえば、改革はその目的を達せられず、元の木阿弥となる。(参照:上司の寛容心が改革を頓挫させる

よって産みの苦しみを経験する職場では、こうした職員を排除していく過程で、一時的に人が足りなくて、現場職員に過重な負担がかかるという時期が必ずある。それを乗り越えるためには、そういう時期には一時的に、事業収益が減ることを覚悟して、介護施設であればショートスティの休止、一部ベッドの稼働停止を断行することだ。居宅サービスならば、利用定員数を一時的に減らしたり、サービス提供する顧客数を一時的に調整する必要がある。

この時期に仕事が回らなくなることを恐れて、サービスマナーを徹底できない職員を現場配置し続けるほど、無駄なことはない。改革しようとかけた時間とお金がすべて無駄になるという意味だからだ。

しかしマナーを徹底した先には、良い人材が必ず張り付いてくる。介護という職業を通じて、人の役に立ちたいという動機づけを持った人は、自分が勤めている職場で、上司や同僚や部下の、利用者に対する無礼なタメ口に傷つき、ストレスを感じている。そういう人が地域にはたくさんいるのだ。そういう人が、「サービスマナーを徹底し、顧客である利用者に対してタメ口で接することを決して許さない事業者」が近くにあることを知れば、そこに必ず就職したいと思うのである。

利用者に介護のプロとして節度ある態度で接したいと思っている「人材」に対して、「人の尊厳を損なわう要素を排除するためにサービスマナーを徹底している私の事業所で働きませんか」と誘えば必ず心が動くのである。

結果的にサービスマナー改革が成功した事業者には、人の心と権利を護ろうとする志の高い人材が集まってくる。それは介護力の向上とサービスの品質アップにつながるし、そこからお客様に対するホスピタリティ精神が生まれ、地域住民から選ばれる事業所となっていく。一時的に定員を減らし、利用者数を制限し、顧客が他事業所を利用していたとしても、それらの顧客は品質の高いサービス、ホスピタリティの高いサービスを求め帰ってくるのだ。

それは過去に行った僕の実践という、まぎれもない事実が存在している。

先日あるサービス事業者に、サービスマナー講師としてご招待を受けた。そこは日ごろからサービスマナー教育に取り組んでいる事業所で、改革というより、ほころびが出ないように、定期的に研修での振り返りを行っている事業所だ。

その時、たまたまデイサービスの送り出しの場面に遭遇したが、若い20歳代と思しき男性職員が、利用者にものを頼まれて、ごく自然に、「かしこまりました。」と応えていた。本物のサービスマナーが身についている証明だろう。

その日のオフ会で、その話題に触れたところ、複数の若い職員さんが異口同音に、「利用者さんにタメ口なんてあり得ない」・「仕事中に利用者さんにタメ口なんて信じられない」と言っておられた。

こうした職場では、職員に新人教育を任せておけば、ごく自然に丁寧語を使いこなせる職員が育っていくのだろうと思った。

そしてタメ口を使いこなせない職員は、己のコミュニケーションスキルの低さを恥じ、周囲の空気と同化できないことに恥じて辞めていくのだろうと思った。そして介護時御者の中で働く職員自身が、プロ意識を持って丁寧語を使いこなし、タメ口で利用者対応することの恥ずかしさに気が付くことが、何よりも大事だと思った。

何より若い介護職員の方々が、「いらっしゃいませ」・「かしこまりました」・「少しお待ちください」などという接客用語を使いこなしている姿は、とても頼もしく、そして凛々しく見えた。そんな場所に、人材も顧客も集まらないわけがないと思った。

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Source: masaの介護福祉情報裏板