次期制度改正に向けた財務省の資料を読んで
月曜日に高知から北海道に帰ってきたばかりであるが、火・水と自宅で過ごしただけで、今日はまた福島に向かっているところだ。
福島市では明日講演を行ない、その日の夜は交流会に参加して、北海道に帰ってくるのは27日(土)となる。ところがその日はちょうど10連休となるGW初日と重なってしまうことに気が付いたのは、一昨日の火曜日だった。
今回の利用空港は福島空港ではなく羽田空港としており、東京駅から新幹線を利用して福島市に入る旅程なので、新千歳と羽田の両空港や駅の大混雑も予測される。そうであるにもかかわらず火曜日の時点で、飛行機のチケットは購入済みであるものの、新幹線の切符は、移動当日東京駅に着いてから買えばよいと高をくくって未購入でいたのだから呑気である。
しかしGW初日の土曜と重なるということで、帰りの新幹線の切符が買えるのか急に不安になって、慌ててJR東室蘭駅の「みどりの窓口」に行ってチケットを購入してきた。幸い希望時間のチケットを買うことできホッとしたのが一昨日のことであった。何はともあれ福島でお会いする皆さん、予定通りたどり着けると思いますので、明日はよろしくお願いします。
明日お話しするテーマは、「介護支援専門員に求められる役割~医療・介護連携からターミナルケアマネジメントまで」となっているが、当然そこでは次期改正の方向性も見据えた話をすることになる。
そのことに関連して昨日、財政制度分科会(平成31年4月23日開催)資料が発出された。このうち介護関係は73頁~95項となっており、2021年度の制度改正・報酬改定に向けた様々な提案がされている。それはまさに給付抑制策のオンパレードだ。
この資料を読む限り、財務省は今年10月の消費税の10%への引き上げは、既定路線として揺るぐことはなく、見送りはあり得ないと考えているようだ。しかしここにきて景気が後退気味で、この引き上げが本当に行われるのか不透明感を増している。昨日の新聞報道では、夏の参議院選挙対策として「消費税を5%に引き下げる案」なんていうものも飛び出してきた。消費税は本当に上げられるのだろうか・・・。
さてそれはともかくとして本資料に戻ろう。医療・介護の給付のキーワードとして、「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助の原則の徹底」が大きく掲げられている。今後この言葉が流行するのだろうか・・・。
「小さなリスク」については、より自助で対応することとすべとし、軽度者のうち要介護1・2への訪問介護サービスの約1/2を占める生活援助型サービスと要介護1・2への通所介護については、地域支援事業への移行や、利用者者負担の見直し(自己負担による利用)を具体的に検討していく必要があるとして、上記画像資料が76頁と77頁に重複して掲載されている。
また地域包括ケアシステム強化法(2017年)によって、保険者に地域の高齢者の自立支援・重度化防止施策と目標設定を義務付け、評価後にインセンティブ交付金という形で報酬金を渡す仕組みについて、これを介護費の地域差の縮減に向けて検討しなおし、保険者による介護費の適正化に向けた取組をより一層促進する必要性を強調している。
要するにケアプランチェックを強化し、介護認定における2次判定の裁量幅を圧縮して、重度変更ケースを減らして給付抑制に努めさせろという意味だ。
また介護事業経営については、事業規模が大きいほど経費の効率化余地などが高いことから経営状況も良好なことが伺えるとして、経営主体の統合・再編等を促すための施策を講じていくべきとしている。介護事業経営者からは、「大きなお世話だ」という声が聞こえてきそうである。
また介護施設の設備・運営基準については、長らく変更されておらず、近年の介護ロボットやICT等の普及効果が反映されていないとして、介護ロボット等の設備に応じて設備・運営基準や報酬に差を設けることを提言している。介護ロボットの導入で、本当に人の配置を少なく出来るのかという、介護現場の不安など一切無視しないと、人手不足には対応できないとしているわけである。
介護保険サービスの利用者負担については、原則2割とすることや、利用者負担2割に向けてその対象範囲の拡大を図るなど、段階的に引き上げていく必要としている。さらに負担段階の決定に当たっては所得のみならず、資産に応じた負担となるよう提言しており、預金のみならず土地・建物を資産換算することを求めている。これは土地・建物を担保に銀行が介護費用(3割負担など分)を貸し付けて、利用者の死後に資産処分して貸付金と利息を回収するという、とりっぱぐれのない「死後ぼったくり制度」の導入を意味している。
また現在自己負担のない居宅介護支援費については、「ケアマネジメントの質の評価とあわせて、利用者自身が自己負担を通じてケアプランに関心を持つ仕組みとした方が、サービスの質の向 上につながるだけでなく、現役世代の保険料負担が増加する中、世代間の公平にも資するのではないか。 」という、まことに勝手で都合の良い論理展開を行って、利用者負担導入を求めている。
居宅介護支援費の自己負担導入は、御用聞きケアマネを増やすだけで、ケアマネジメントの質向上にもならないし、自己負担することで権利意識が高まる利用者の要求を無視できずに、御用を聴くということにより不必要なサービス利用が増えると断言できる。しかも「居宅介護支援費への自己負担導入は、介護支援専門員の職が奪われるという意味でもあるんだぜ」で指摘した問題が必ず出てくる。これはケアマネジメントの在り方を揺るがす大問題である。その解決を図る術はない。
そのことを考えると、頑なに居宅介護支援費の自己負担を求める財務省の姿勢から感じることは、超エリートで頭の良い財務官僚も、この部分では頑迷な思考停止状態に陥っていると言ってよいだろう。
さらに居宅サービスにおけるケアマネジメントの役割りについては、「介護サービスの価格の透明性を高めていくための取組等を通じて、サービスの質を確保しつつ、確実に価格競争が行われる仕組み(より良いサービスがより安価に提供される仕組み)を構築すべきである。」としている。どういう意味かというと、介護サービスは必ずしも公定価格で利用する必要性はないのだから、サービス事業者に値引きを促して、より安い価格で同質のサービスを選択するように努めよと言っているわけだ。ケアマネジメントを価格破壊の道具にしろっていう提言は下品でしかない。ケアマネジメントの便利使いもいい加減にしろと言いたくなる。
各サービスにおけるPDCAサイクルの構築も求めている。介護サービスの質や事業者の経営への効果・影響を検証することで価格を下げろというわけである。
どちらにしても給付は下げて、利用は制限するために、地域保険者はより厳しく監視しろという、めちゃめちゃな提言案になっているわけだ。
その中でもケアマネジャーは、もっと安い給料になっても、もっと働いて給付制限に協力しろと言われているわけである。この提言資料に、日本介護支援専門員協会が噛みつかないとしたら、会費を払っている人は即刻退会したほうが良いだろう。
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Source: masaの介護福祉情報裏板