介護職員のT字カミソリ使用による髭剃りは整容の一環として認められるとの情報について

昨晩ネット配信されたニュースに驚かされた。埼玉県和光市企画部審議監の東内京一容疑者逮捕というニュースだ。容疑は80代の生活保護受給者の女性(すでに死亡)から預かり、保管していた現金200万円をだまし取ったというもの。

東内氏と言えば、和光市方式の「自立支援介護」の生みの親で、最も強力な推進者であることは、業界関係者なら知らない人はいないだろう。高齢者の自立支援や尊厳を訴えていた人が、一方で、被保護者の財産を搾取するという人としての倫理のかけらも感じられないような犯罪行為を行っていたことにショックを受けた人も多いだろう。

しかし、「介護保険からの卒業」を推進する、和光市方式の自立支援介護こそ、人としての倫理観を歪めなければ実施できない方法とも言え、本事件も和光市方式のうさん臭さを表しているものだと言ったら、それは言い過ぎだと怒られるのだろう。

どちらにしても開いた口が塞がらない、ひどい犯行である。こういう人物が福祉事務所を牛耳っていたとしたら、福祉とは何ぞやと言われかねない。この事件によって和光市の介護保険制度運営に影響が出ることはないが、しかし和光市の福祉行政にとっては、歴史に残るぬぐいきれない大きな汚点だろう。市民の和光市福祉行政に対する信頼が、大きく揺らぐことは避けきれない。再発防止策は待ったなしである。

それはともかく、今日は表の掲示板で、「介護職員が身体整容の一環としてT字カミソリを使用して髭剃りを行う行為は、以前から可能であった」と情報提供された件について、こちらでもアナウンスしたい。

リンクを貼りつけたスレッドを読むとわかる通り、きっかけは国会議員のブログに、厚生労働省社会・援護局厚生労働省生活衛生課に確認した情報として、「身体整容については、理容師法の理容業に該当しないために、カミソリ等でひげを剃る介護サービスを、理容師資格を有していないホームヘルパーが行うことは可能」と書かれているというもの。

これは本当かということで疑問のスレッドが立てられたものである。

しかし我々はかねてからそれはダメだと指導されてきたという経緯がある。それは我々が解釈を誤解していたという問題ではなく、国の疑義解釈でそのことが示されており、介護施設や在宅サービスの場で、介護職員やヘルパーが、利用者の髭剃り介助を行うことができるかどうかという判断については、「電気カミソリによる髭剃りは可能だが、T字カミソリによる髭剃りは不可」というのが一般的な解釈として浸透していたはずだ。

その理由は、平成19年10月9日内閣官房 地域活性化統合事務局の構造改革特区及び地域再生(非予算関連)に関する再々検討要請に対する各府省庁からの回答についてという疑義解釈に根拠がある。

【要望事項(事項名)】顔剃り・髭剃りの規制緩和

【提案主体からの意見】回答では、顔剃り等についいては、「理容」行為に該当し、理容師のみに認められた行為と示されていることから、理容師以外の者が行うのは違法行為であると認識して相違ございませんか。
つまり、介護サービス(入浴介助)でおこなわれている顔剃り・髭剃りの行為は、理容師のみに定められた行為であり、介護福祉士・ヘルパーであっても、顔剃り・髭剃りを行うのは容認されず、違法であり、認めないものと判断されますが、厚生労働省の見解をお示し下さい。

【各府省庁からの再検討要請に対する回答】
 顔剃り等は理容行為に該当し、理容に関する専門的知識・技術を有しているとして免許を与えられている理容師のみがこれを業として行うことが可能なものとなっており、また、身体が不自由などの理由により理容所に来ることができない方は、法令上出張理容の対象として位置付けられ、出張理容サービスを受けることができることとなっている。そのため、美容師が顔剃り等を行うことを認めることは困難である。
 なお、介護従事者であっても、かみそりによる顔剃り等は認めていない。

↑ここでいう、「かみそり」とは、理美容で使用する西洋剃刀のみならず、T字カミソリも含むとされ、介護職員が業務で使えない道具と理解させられてきた。そしてこの疑義解釈は、現在でも首相官邸HPにそのまま掲載されており、国会議員情報とは異なっている。

さらに訪問介護に関するQ&Aでも以下のように示されている。

Q.訪問介護員等が髭剃りを行うことは可能か。

A.利用者に対し、散髪や、カミソリ(T字カミソリ含む)を使用しての髭剃りは、必要な知識及び技能をもって行う「理容」であり、理容師法に抵触する(理容師免許を受けた者でなければ理容を業としてはならない)ため、訪問介護員等が行なうことはできない。
また、「理容」は訪問介護サービスの内容に含まれないため、理容師免許を持ったヘルパーが理容を行った場合でも介護保険給付の対象とならない。
なお、電気カミソリを使用しての髭剃りは、一般的に専門的な知識及び技能が不要であり、訪問介護員等が行って差し支えないものと考える。

↑ここでははっきり、T字カミソリも不可とされているわけである。(※看護職員については、医療行為として剃毛は認められていますね。)このQ&Aも削除されていないために、件の国会議員のブログ情報を鵜呑みにできないというのが本音であった。その議員も、厚労省の担当課情報を書くだけではなく、なぜ今まで間違った解釈が通知されていたのかにも触れるべきだし、こうした情報を書き込むのと同時に、せめて首相官邸HPの記述を変えるように運動すべきである。

しかし本件について、リンクを貼りつけたスレッドのNo6において、 shenron1972さんという方が厚労省に直接問い合わせて、上記の疑義解釈(理容師法に抵触するとの解釈)との整合性も含めて回答を得ている。

それによると担当官より「当時の回答内容に不足があった。」とのことで、「身体整容の一環としてT字カミソリ使用は可能。」との回答を得たというのである。

shenron1972さんは僕と面識のある方で、どこのどなたか身元がはっきりしており、極めて信頼できる方であることは僕が保証する。(得体のしれない国会議員より、よほど信頼できます。)

そういう信頼できる方からの情報なので、これは信頼できる情報と言ってよく、国レベル(というより厚労省内)では、すでに過去の見解を訂正して、「介護職員が身体整容の一環としてT字カミソリを使用して髭剃りを行う行為は問題なし。」というのが最新の見識と言えるのだろう。

ただしこのことを改めて通知するのは、過去の誤った解釈を広報するようなものなので、それはできないというスタンスのようだ。市町村を通じて問い合わせてもらえば、新たな見識によって回答するということらしいので、関係者の方は市町村にそのことを依頼していただきたい。

しかし過去の面子にこだわって、そのような通知もしようとしない厚労省の姿勢はいかがなものかと思う。もっと現場の職員が働きやすくなるように、丁寧なアナウンスに努めないと、人材が張り付く業界にならない。

案外こういうところも、人材対策とリンクしていることに気が付いてほしいものだ。

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Source: masaの介護福祉情報裏板